Book Select 本を選び、本に選ばれる

読んだ本にまつわる話を書き綴っていくことにしました。マンガが大半を占めていますが小説も好き。マンガはコミックで読む派。本は買って読む派なので常にお金と収納が足りません。例年1000冊以上コミック読んでます。ちなみに当ブログのアフィリエイト収入は昔は1000円くらいいった時もあったけど、今では月200円くらいです(笑)みんなあんまりマンガは買わないんだなぁ。。収入があった場合はすべて本の購入に充てられます。

松谷みよ子に刺激を受けて生まれた手塚風の民話。手塚治虫/ハトよ天まで

ついさっきまで、SF読んでたかと思うと、今度は一転して民話調の物語になるという
この幅の広さは本当にすごい。。

全集を端から読んでいくとあらゆるジャンルを開拓しちゃってるなぁ、と改めて感じられる。

ちなみに、基本は民話調なんだけど、少しだけSF要素が入っているのも本作品の特徴。

あとがきに依ると、松谷みよ子『竜の小太郎』に刺激を受けて描いた作品とのこと。

龍の子太郎 (講談社青い鳥文庫)

龍の子太郎 (講談社青い鳥文庫)

松谷みよ子と言えば絵本や児童文学で有名。

いないいないばあ (松谷みよ子 あかちゃんの本)

いないいないばあ (松谷みよ子 あかちゃんの本)

これとか今なお、売れてる絵本。
でも、絵本だけじゃなくて、民話や神話をまとめた本も出している。
『現代民話考』はいつか読もうと思って読めていない本だったりする。

これを機にとりあえず買っておきたい気分になってきたなぁ。

まぁ、それはさておき、本作はそういった民話風の作品で、
天狗が出てきたり、蛇が助けてもらった恩返しに、母の姿をして子供を育てたり、とか。

『来るべき世界』などとは違って、話をかなり文字で補っている作品でもある。
ナレーションのように物語を説明する文字列があって、ストーリーを補完している。
これが文字なしだったら、『来るべき世界』のように話が所々飛ぶような、
妙な作品になっていた気がする。

ただ、本来はそこを言葉で説明するのではなく、
コマで見せるべきなんだけどね、漫画としては。
そんなことをしたり顔で手塚治虫に言って見たところで意味ないので、別にいいんだけど。


支那虎が好きだ。名脇役ランキングでもヤムチャと張るくらいの名脇役だろ、これ。車田正美/リングにかけろ1

車田正美の『聖闘士星矢』にどハマりした世代なので、
リングにかけろ』は1世代前なのよね。

だからこれまでも読んだことないまま過ごして来たのだけど、
週刊少年ジャンプ50周年ということで、
六本木のジャンプ展に行って来たら昔のジャンプ作品とかも
たくさん読みたくなってしまったのでした。


リングにかけろ1 1

リングにかけろ1 1

ギャラクティカ マグナムっていう技があるってことは
なんとなく知ってたよ。
でもね、それてっきり主人公の必殺技だと思ってたのよ。


読んで見たら違うのね、主人公のライバル的なキャラクター、剣崎の必殺技なんだね。


昭和の漫画は描かれるハングリーさが違うっていうか、
不幸の描き方が容赦ない。

子供を育てるためと思って母親が再婚するんだけど、
その義父が飲んだくれのクソ野郎。
この義父のクソ野郎ぶりが半端なくて、
姉弟は家出して、ボクサーを目指すっていう話。


で、いろんなライバルと戦いながら成長を遂げ、
いつしか敵が味方になりより強大な敵に立ち向かうという
ジャンプの王道バトルものの展開。

個性豊かなキャラクターがたくさん出てくる漫画ではありますが、
ひときわ輝くお気に入りが支那虎一城。

manga.te28.net

ドラゴンボールで言うならヤムチャ的なポジション?
それは言い過ぎ??


序盤はかなり思わせぶりな登場したくせに、
お話の都合なのか、主人公との戦いでは瞬殺されると言う
ものすごく雑な扱いを受けてしまうと言う鮮烈なデビューを飾ったこのお方。


それなのに、再び強そうなキャラとして登場して来た時には、
車田正美、適当すぎる!と思わず笑ってしまった。


ラスト付近では自らの腕を犠牲にする決死の必殺技「円月剣」を生み出すんだけど、
もうボクシングはできない身体になった、、、、はずなのに、
しばらく後のお話では、実にカジュアルに「円月剣」を打ちまくると言う暴挙にも出る。
それが支那虎。


まだ読んだことがない人は、支那虎の勇姿を見るためだけに読む価値があると言える。
久しぶりにいいキャラに出会えたなぁ。満足。

ちなみに支那虎の元ネタはフランク・シナトラだと思うけど、
別に名前以外は特にモチーフにしてない気がする。

シナトラは歌手だけど映画スターでもある人物。
男性ジャズ・ボーカルの歴史では欠くことのできない人物。
まぁ、ジャズという枠を超えてスターになった人だけど。

色々アルバム出してるけど、とりあえず聞くなら『スイング・イージー』で間違いなし。

スイング・イージー

スイング・イージー

ちなみにフランシス・フォード・コッポラ監督の名作『ゴッド・ファーザー』で、
ドンを頼ってくる落ち目の歌手(映画の主役が欲しいって頼んでくるやつね)は、
落ち目の時のフランク・シナトラがモデルと言われています。

映画はもちろん、マリオ・プーヅォの原作も面白いよ。
高校生の時に映画にハマって、アル・パチーノかっこいいわ〜って憧れて、
その勢いで原作の小説も読んじゃったのは懐かしい思い出。


ゴッドファーザー 上 (ハヤカワ文庫 NV 54)

ゴッドファーザー 上 (ハヤカワ文庫 NV 54)

ゴッドファーザー 下 (ハヤカワ文庫 NV 55)

ゴッドファーザー 下 (ハヤカワ文庫 NV 55)

ゴッドファーザー〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

ゴッドファーザー〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

ゴッドファーザー〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

ゴッドファーザー〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

映画見たことある人は多いけど原作読んでる人ってほとんどいないよね。

うん、話が飛んだけど、支那虎はいいキャラだよ!

リングにかけろ1 1

リングにかけろ1 1

フリッツ・ラングの映画のタイトルと、写真で見たワンシーンから生まれた傑作。 手塚治虫/メトロポリス

手塚治虫作品の中でも割と最近映像化されたりしている作品。
つまりとても名作と世評が高いお話でもある。

メトロポリス

メトロポリス

メトロポリス [DVD]

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まぁ、何度か言ってるけど、何がすごいって
物語の題材の先進性だよね。
メトロポリスは人工細胞による人造人間がテーマのお話。

その力を欲する大人の事情に翻弄され、
やがて自分が人造人間だと知り
自らを生み出した人類に復讐するというお話。

もう、いわゆる科学技術の進化が人類を滅ぼす的な話だったり、
人工的に人を作る、超人的な人造人間の話だったり、
人が生み出したものが人に復讐するであったり、
もう普遍的な物語の型が詰まってる。

今読んで面白いかどうかは置いといて、
さすがにこれはすごいよなーって思うよね。

ちなみに、メトロポリスフリッツ・ラング監督の映画が有名ですが、
この映画本編は見ていなくて、タイトルと写真1枚見て、着想したらしい。

だから、話は全然関係ないし、パクってもいないんだよ。
結構そこら辺を誤解されるみたいで、
本人が解説で強調してました。

やはり、手塚治虫全集は本人のあとがきが最も面白い!

ちなみにフリッツ・ラングは映画史に残る初期ハリウッドの名監督。
第二次世界大戦であらゆるジャンルの世界中の才能がアメリカに亡命してきたけれど、
その中で映画監督といえばこの人って感じ。

『M』とか『死刑執行人もまた死す』とかが代表作。

フリッツ・ラング・コレクション M [DVD]

フリッツ・ラング・コレクション M [DVD]

中でも『M』は今見ても普通に面白い気がするからオススメ。


メトロポリス

メトロポリス

メトロポリス [DVD]

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今年度、ビジネスマンが読むべきマンガ大賞を選ぶとしたらこれになるんじゃない? 山田胡瓜/AIの遺電子

ビッグデータ機械学習ディープラーニング、AIと、
猫も杓子もそんなようなことを口にしだしている今日この頃だけど、
AIをテーマにした近未来の世界を描いた作品。

チャンピオン連載ということで、まぁややマイナーなのだけど、
IT少しでもかじってるような人たちには楽しめる作品のはず。

UI/UXの世界で著名な深津貴之さんが
めっちゃオススメしてて、静かに盛り上がってきている感じ。
確かに素晴らしい作品だから、うまくプロモーションしたらもっと売れるはず!
ていうか、もっと売れて欲しい!!!
と、自分も読んでみて全力応援モードになったのでした。


お話の世界はAIが当たり前のように実用化された近未来。
人とロボット、そしてその中間に位置するヒューマノイドがいる世界。
そして、人とロボットの境界線ってなんなのだろう?というテーマが
1話完結型のお話として次々と繰り出される。

読んでる感覚としてはブレードランナーの変奏曲をすごい勢いでたくさん見ている感じ。

1話、1話示唆に富む内容でこのクオリティを維持し続けているのは結構驚異的。
正直2、3巻でネタ切れるかな、と思ったんだけど7巻まで出た今でも面白い。

電脳を移し替えれば、それは同一の人なのか、とか
自分の記憶なのか、作られた記憶なのか、とか
脳や感情に対してパッチを当てるように修正していくことが可能になったとしたら、
それは自由意志があるって言えるのかな、とか
ロボットには人間らしい振る舞いを禁止する必要があるとか、
もうほんと様々なテーマ、アイデアの宝庫。
そして、これってもしかすると自分たちが生きてる間に
現実の問題として直面することになるのかもしれない世界なんだよね。

読後感はAIをテーマにした星新一ショートショートを読んでる感覚なんだけど、
最近読んだ別の漫画でもなんかアイデンティティー系の話あったなー、って思ったんだよね。

きまぐれロボット (角川文庫)

きまぐれロボット (角川文庫)

なんだっけなーって考えてたら、思い出しました。
全然、違う作品なんだけど、こちらも注目の作品、『亜人』でした!

亜人(1) (アフタヌーンコミックス)

亜人(1) (アフタヌーンコミックス)

死なない/死ねない 亜人が人類から迫害されてる話なんだけど、
亜人はどんな傷を負っても再生できるのよね。
だから頭切り離されると頭が再生しちゃうわけ。
でも、頭が再生しちゃった亜人は果たしてそれまでと同じ人と
言えるのだろうかっていうテーマがあの作品にも潜んでいるんだよね。

アイデンティティ問題を孕んだヒット作品がじわじわ増えて来ているような気がしていて、
それもまた世相を反映しているって言えるレベルまで売れるかどうか、ちょっと注目してる。

いずれにせよ、『AIの遺電子』もっと全力で口コミが広がると良いなぁ。
すごく楽しみな作品。

未読な方は今すぐ1巻読んでみることをお勧めしますよー!!


落語が好きな人も、そうでない人も面白い、過去にとり殺されそうになった男女の再生の物語。 雲田はるこ/昭和元禄落語心中

落語は好きですか?

 

僕は好きです。

かっこつけない普通の人たちの物語には人間の喜怒哀楽が詰まっているし、

いろんな欲望も描かれている。

 

欲に目が眩むとロクなことはなくて、

義理人情に厚い人が報われたりする。

基本的に気持ちが良い話が多いのが落語。

 

本作の主人公もそんな落語に出てくる与太郎そのまんまの性格なんだけど、

師匠の八雲は対照的に暗く重い過去を引きずっている男として描かれる。

 

 

昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)

昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)

 

 

 

 物語はこの明暗、陰陽を軸にしながら語られるのだが、
基本的に師匠の八雲が陰鬱なキャラクターなので、
落語の話なのに全般に漂うのは暗くどこかアンニュイな雰囲気。
それが物語の色気にもなっていて、
アニメ化の際に主題歌を椎名林檎が作ったのは象徴的だよなぁ、と。

 

 

昭和元禄落語心中音曲噺其の一

昭和元禄落語心中音曲噺其の一

 
昭和元禄落語心中音曲噺其の二

昭和元禄落語心中音曲噺其の二

 

 

まぁこの本に興味を持つ人のうちどれだけの人が落語未経験者で、

これをきっかけに落語に興味を持つのかはわからないけど、

少しでも興味を持ったならば絶対聞いてみることをお勧めしたい!!!

 

ちなみに落語は音だけ聞いてもとても面白い。

寄席で一番嫌がられる客は目をつぶってじっと聞いている客、なんて話があるらしく、

それもそのはず、音だけだとごまかしが効かないんだよね。

 

爆笑問題太田光も無類の落語好きなんだけど、

以前糸井重里との対談で落語を音源で楽しむことに関して話していた。

自分もその記事を読んで敢えて音源で聴くことの面白さを知ってハマっていったのでした。

 

もう14年も前の話なんだけど、その対談、調べてみたら見つかった!!

 

ほぼ日刊イトイ新聞 - 爆笑問題・太田光の家族をつくったゲーム。

 

初心者にもオススメなのは古今亭志ん生古今亭志ん朝、の親子。

どちらもとんでもなくうまい。

そして面白い。

 

 

落語名人会 (1) 古今亭志ん朝(1) 「明烏」「船徳」

落語名人会 (1) 古今亭志ん朝(1) 「明烏」「船徳」

 

 

 

音源でも十分話が理解できて面白いのはさすが、と唸らされる。

大きめのTSUTAYAならレンタルもしてるからそういうところから入門するのもありかも?

 

と、なんか落語のススメみたいな話になってしまったけど、

過去にとり殺されそうになった男女の再生の物語なのよ、これ。

だから、落語興味なくても面白いと思うよ。

 

そして読んだあと少しでも落語に興味を持ったとしたらそれは素晴らしいことだ。

言いたいことはそれだけ。

 

 

 

昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)

昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)

 

 

 

 

元々1000ページあった原稿を400ページに短縮っていくら何でも無理があるでしょ!? 手塚治虫/来るべき世界

手塚治虫の初期SFの名作と言われているらしい!!
アマゾンのレビューも絶賛されとる。

確かに、当時こういった物語は斬新だったんだろうなぁ。
すごいと思うよ、実際。
でも今読んで面白いかは別の話じゃ。



ちなみに、この作品と合わせてSF3部作として世評高いのは
メトロポリスロストワールドね。

ロストワールド

ロストワールド

メトロポリス

メトロポリス


どちらも同名の映画はあるけど、内容は全く関係ない。
パクってないよ、と本人が後書きでも力説してました。
メトロポリスは、タイトルと写真でみたワンシーンから着想を得たらしい。


ま、それはそれとして、来るべき世界である。
原爆実験の放射能の影響で変異した謎の生物フウムーン、とか
地球滅亡に際してのノアの箱舟みたいな話とか、
とにかくスケールがでかく色々な要素が詰め込まれている。
詰め込みすぎなくらい詰め込まれているというこの密度の異常な高さは
初期手塚治虫の特徴。

それぞれの要素で物語作れますよっていう濃いテーマを
これでもかと放り込んでくるから、正直とんでもなくごちゃごちゃした話になる。

でもそれもそのはず、手塚治虫本人のあとがきによると、
元々1000ページあった原稿を400ページに短縮しているんだそうな。
そのせいで前半がよくわからないオムニバスみたいになってしまった、とボヤいてた。

ご本人がおっしゃる通りで、正直前半戦は1つ1つのエピソードが
ものすごくあっさり、すごいスピードで展開していく。
ちょっと話飛びすぎじゃない??ってくらい。

まぁ、そんだけページ削ればそうなるよね。。。
だとするとオリジナルの物語が読みたい!ってのが人情だけど、
使わなかった原稿は、遊びに来たファンとかにあげちゃったりして
散逸してしまったらしい!!!

いやー、なんともったいない。。

最初の1000ページが一体どんな展開だったのか、、、
幻の作品に思いを馳せたくなる、そんな作品でした。

こういうある意味牧歌的なお色気漫画、最近無いよねぇ。 横山まさみち/やる気まんまん

精力剤の老舗・四つ目屋本舗の若旦那、泊蛮平が、
新薬「おとぎ丸」のアピールも兼ねて、10人の女性とセクシー・ファイトに挑むという
昭和のお色気漫画!


やる気まんまん(1)

やる気まんまん(1)


先にイッたら負けっていうルールなんだけど、
精力剤のアピールならすぐに元気になるって方が
正しい気がするんだけど・・・


これじゃただの遅漏薬じゃなかろうか、というツッコミを入れたくなるけど、
いろんなタイプの女性10名とのバトルは、時代を感じて面白い。
いわゆる直接的なエロ漫画ではなくて、娯楽漫画の延長としてのお色気漫画って感じ。
ヒゲとボインとかもそういうジャンルだよね。



こういうなんか牧歌的なお色気漫画って最近あんまりないよなぁ。
これはこれで、誰かに受け継いで欲しい文化というか作風なのだけど。


やる気まんまん(1)

やる気まんまん(1)