Book Select 本を選び、本に選ばれる

読んだ本にまつわる話を書き綴っていくことにしました

魅力的なキャラクターの宝庫だし、いわゆる王道バトルものとは一線を画した名作。 沙村広明/無限の住人

両親を殺され復讐を誓う娘「凛」と
100人斬りの異名を持つ元侍「万次」を中心に描かれる群像劇。

万次は切られても傷口がすぐに治るという不死の力を身につけているというチート設定。
でも、不老不死だけど、痛みは感じるってのは大事。
ちゃんと切られりゃ痛い。でも、治る。だから無敵な訳じゃない。
素の実力だけなら万次より強いやつもいっぱいいる。
その絶妙な強さのバランスが良い感じ。

無限の住人(1) (アフタヌーンKC)

無限の住人(1) (アフタヌーンKC)

脇役達が個性豊かなので、それだけで面白いのだけど、
こういうの読んでると、いかにキャラクターは極端というか、
バランスの悪い、歪なやつの方が魅力的かが分かる。

途中、不老不死の秘密を探る、みたいな展開になって、
ひたすら万次が幽閉されて手足切断&接続の実験を繰り返す話に。
マッドサイエンティスト的な人が出てきてごちゃごちゃやるものの、
総じて地味な話が続くから中盤しんどかった。
そもそも、なんで不死の解明にそこまで拘るのか、とか
そこら辺の必然性の辺りが弱いのも中盤つまらん理由かも。

ただ、あの閉塞感の中、最後の最後で脱出するときの開放感と
胸くそ悪いくらいヤな奴である尸良が、
思わぬやつを連れて出てくる所はしびれた。

ちょっとやり過ぎ感も否めないけど、
尸良がそんなに重要な存在になるとは思わなかったし、
あの少年がこんな形で再登場するとは・・・。
物語が動き出す瞬間ってこういうシーンだよなぁ、と思う。

まぁ、結局、復讐とか、親の代からの因縁とか、死なない/死ねない、とか、
そういうのがテーマなんだけど、普通に楽しい。

脇役の乙橘槇絵が最強ってのも面白い。

いわゆるジャンプ系マンガのような強さのインフレが起きまくる訳でもなく、
必殺技が飛び交うわけでもなく、不死の秘密の根源である謎のキャラ八百比丘尼
まったくもって脇役で終わる、ていうかほとんど出番がない潔さとかも最高。

そういう意味ではわかりやすいバトルものの王道みたいなことは極力やらないという制約の中で
進んでいくところが、この作品をユニークで味わい深くしている気がする。

スピンアウトとかノベライズとか展開するならいくらでもできそうな素敵な題材。
まぁ、無いかもしれないけど、淡い期待を持ちながら待っていたい。
 

無限の住人(1) (アフタヌーンKC)

無限の住人(1) (アフタヌーンKC)