Book Select 本を選び、本に選ばれる

読んだ本にまつわる話を書き綴っていくことにしました。マンガが大半を占めていますが小説も好き。マンガはコミックで読む派。本は買って読む派なので常にお金と収納が足りません。例年1000冊以上コミック読んでます。ちなみに当ブログのアフィリエイト収入は良い時で月1000円くらいです(笑)収入はすべて本の購入に充てられます。

下世話で猥雑な物語の中に、生命力を感じる。 平山夢明/デブを捨てに

タイトルと表紙が気になって買ってしまった。
で、短編集で4作品ほど収録されているけれど、
表題作は本当にデブを捨てに行く話だった!!!

これが初めて読んだ作品だけど、そこそこ話題の作家さんっぽい。
まぁ、メジャーではないと思うけど・・・。

久しぶりにこういう芸風の作家の作品を読んだ。
なんというか、世の中の汚い所、底辺を好んで描くようなタイプ。

そこにはセックスとか暴力が溢れていて、
若干の胸くそ悪さを感じたりもするのだけど、
それでもその猥雑さに生命力を感じてしまう。

世の中きれいなことばかりではないし、
一歩間違えばこういう世界が隣に広がっているわけだ。

まぁ、あまり友人にはお勧めしづらいけれど、
個人的には平山夢明、めっちゃ気になる存在になった。

デブを捨てに

デブを捨てに

まぁ、自分とはまったく違う世界、というか、
自分で経験することの無い世界だからこその楽しさみたいなものがある。
それって安全地帯から動物を眺めているみたいなも動物園的感覚に近いものなのだろうか。

あと、やっぱり才能を感じるのは題材だけでなく、
それを語る際の視点や言葉の選び方。

ヒッチハイクしたトラックの運転手が、おれに食事と酒を奢ると云ってくれたのだが、代わりに〈気の交換〉をしろと云う。
「気の交換?どういうことだい」
そう尋ねると、薄い頭に立派な顎髭を生やしたそいつはギンガムチェックのネルシャツの前ボタンを開け、「こいつさ」と云った。まだすっかり夜が明けたというには暗かったので、おれが覗き込むとそこには赤ん坊のようなピンク色の乳首が陰毛のような胸毛の隙間から覗いていた。
「このアンテナに、あんたのアンテナをぴったりくっつけさえすりゃ、後は自然とエニシングゴーズさ」
P.9

これなんかも、冗談とも本気ともつかない、
それでいて滑稽な「後は自然とエニシングゴーズさ」っていう台詞に心を掴まれてしまった。

おれは若い母親たちの警戒警報的視線を浴びつつ、トイレに入り用を足した。母親たちに自分がちゃんとした人間なんだと伝えるために手を洗ってもみた。
P.12

そしてこの他者の視線への意識もまた面白い。
こういうディテールにこそ才能の違いが出るって常々思ってる。
子どもができて、ママ友たちが集まっている昼間の公園の様子が、
ありありと想像できるようになった、という自分の変化もまた
このくだりが面白かった要因の1つかも。

また、表題作よりも印象的だったのは、ビッグダディをネタにした「マミーポコポコ」という作品。
全然違う始まりだったのに、気がつくとビッグダディ?を彷彿とさせる家庭の物語に。
で、作中ある事件がきっかけで状況が一変すると、
堰を切ったようにテレビ局の人間が本音を語り出す。
これがまぁ、また身も蓋もない話。

「なにを甘ったるいことを。こんな見世物みたいな番組をそのまま化け物屋敷ですなんて電波に乗せられないだろ。だから美談風に売るんだよ、こういうフリークス物は。当たり前だろ、そんなことは視聴者わかってるよ。何が勇気だよ。人はただ単にこんな豚小屋で豚みたいな生活してる人間って、どんな化け物なんだろうって興味本位や怖い物見たさでチャンネル合わせてるだけなんだよ。どこの世界に、こんな扶養能力もないのに餓鬼だけ産み殺していく無責任な人間を讃える阿呆がいるっていうんだよ。あんたらは世間の反面教師。ああ、こんなことしちゃいけないな。こんな家より、まだウチはマシだとそう思わせるためだけに居るの!」
P.80 - P.81

と、いうわけで、他の作品も読みたくなってきた。

ダイナー (ポプラ文庫)

ダイナー (ポプラ文庫)

メルキオールの惨劇 (ハルキ・ホラー文庫)

メルキオールの惨劇 (ハルキ・ホラー文庫)

他人事 (集英社文庫)

他人事 (集英社文庫)

FKB 怪談幽戯 (竹書房文庫)

FKB 怪談幽戯 (竹書房文庫)

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

ミサイルマン (光文社文庫)

ミサイルマン (光文社文庫)

異常快楽殺人 (角川ホラー文庫)

異常快楽殺人 (角川ホラー文庫)

平山夢明の全身複雑骨折

平山夢明の全身複雑骨折

暗くて静かでロックな娘

暗くて静かでロックな娘

東京伝説―うごめく街の怖い話 (竹書房文庫)

東京伝説―うごめく街の怖い話 (竹書房文庫)

まぁ、本当に色々と雑多に書いてるんだなぁ、という印象。
雑多すぎてちょっと引くけど、ずっと読んでるとすぐに食傷しそうだから、
合間合間に、楽しんでいきたい・・・。

デブを捨てに

デブを捨てに