Book Select 本を選び、本に選ばれる

読んだ本にまつわる話を書き綴っていくことにしました。マンガが大半を占めていますが小説も好き。マンガはコミックで読む派。本は買って読む派なので常にお金と収納が足りません。例年1000冊以上コミック読んでます。ちなみに当ブログのアフィリエイト収入は昔は1000円くらいいった時もあったけど、今では月200円くらいです(笑)みんなあんまりマンガは買わないんだなぁ。。収入があった場合はすべて本の購入に充てられます。

世界を創造し始める生存者たちの物語 小川一水/天冥の標 7 新世界ハーブC

もうネタバレしちゃうからあんま書けないけど、
シェパード号のハーブCへの墜落から
メニー・メニー・シープができる過程を描く第7巻。

救世群を逃れ世界を創造し始める生存者たちの物語。

1巻で描かれていた世界はこうして作られたということ?
ってことは??

伏線が回収され、世界の全体像が見えてくる。
Netflixとか Amazonとかでオリジナルドラマ化しないかな。
名作過ぎる予感。

誰も幸せにならない争いが起こり、いよいよ物語が動き出す。 小川一水/天冥の標 Ⅵ 宿怨

第6部は大ボリュームである。
これまで各種族の来し方を語ってきたけれど、
ついに物語が動き出す。

迫害、疎外され続けていた救世群に、澱のように積もったもの、それが宿怨。
ただ、それすらも仕組まれたものなのだけど、そんなことは当事者たちは知る由もない。

救世群に伝わる聖典はいつの間にか改竄され、
狂信的な存在を生み出す。
自らの体を改造し、驚異的な力を手に入れ、
世界に対し宣戦布告する救世群。

誰にも止められない、誰も幸福にならない争いが始まってしまう。

そして出てくるシェパード号と、その墜落。
いよいよ第1部の舞台だったハーブCにたどり着いてしまった。

物語の舞台へ、役者は揃いつつある。



一流の人は常にインプットしてインスピレーションを得ている。 北村道子/衣裳術

主に映画業界で活躍しているスタイリスト。

前半は写真集、後半はエッセイで作品にまつわる話も出てくるという構成。

当たり前のことなんだけど、一流の人は常にインプットしてインスピレーションを得ている。
インプットの質と量が圧倒的に違うんだよな。

衣裳術 《新装版》

衣裳術 《新装版》

見ることに一番意味がある。

自分が心を動かされるものに対して素直であれ、という教えを子供の頃に受けているのは素晴らしいことなのかも。
確かに自分が感動して心を動かされるものというのは何よりも大事だよなぁ。

「桜がきれいだと思ったら、ずっと見ていなさい」とも言われた。その方が大事だからと。桜の美しさに心を奪われるよりも素晴らしい授業があれば、学校に価値を見いだすことができたけど、わたしはできなかった。そうやって、自分で考えるということを学んだ。それはあるものを注視するっていうこと。見ることに一番意味がある。
P.100

まぁ、だからと言って学校行かなくてもいいよとは言わないけど、自分の好きなこと、もの、は人と違っても大事にしてほしい。

増村保造

谷崎潤一郎が原作で増村保造が監督した『刺青』(一九六六)で、若尾文子が着物をすとんと落とすシーン、あれにはエロスがあった。そういうことに近いことが起きていないのよ。若尾文子は現実に着物を落として、裸になっていると思う。でも前から撮っていない。それは若尾文子増村保造を信用しているから、そこまでやれる。監督もカメラマンも世界に誇る映像を撮っている。
P.112

増村保造が好きで、学生時代渋谷のツタヤでビデオテープを一通り借りて夢中で見ていた。
千羽鶴』や『清作の妻』なども若尾文子の狂気が最高だった。

千羽鶴(1969) [DVD]

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清作の妻 [DVD]

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黒は色の終焉

彼らは光と闇というのがよくわかってない。モノクロでも、黒に色をかけられる人がいないでしょう。モノクロっていうのはモノクロに色をかけるべき。赤とか足していくのよ。服も深く黒染めをするときには色んな原色を加えなきゃいけない。そうじゃないと実は黒を表現できないの。黒は色の終焉なのよ。
P.116

光は色が混ざると白になる。絵の具は色が混ざると黒になる。


衣裳術 《新装版》

衣裳術 《新装版》

作物を育てることとクローンを育てること。 小川一水/天冥の標Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河

謎の知的生命ノルルスカインの謎に迫る第5部。
ノルルスカインの話と交互に未来の農家の話が語られる。

海賊稼業から足を洗った朴訥な男と、その娘。
機械的な大量生産と、人の手による栽培の対比。
未来の農業も現代の縮図として描かれているが、
人力で頑張る農民達の生活は苦しい。


作物を育てることとクローンを育てること。
遺伝子と品種。

ある種の遺伝子の暴走としてのレッドリート。
ノルルスカインやミスチフもまたレッドリートのようなものなのだろうか。

はてさて一体どうなるのか。

イラスト可愛い、あとピックアップする作品や監督に意外性があったな。 アダム・オールサッチ・ボードマン/イラストでわかる映画の歴史

映画の歴史はまだ100年そこそこなんだけど、
その100年で凄まじい技術的な進化を遂げている。

その映画の歴史を軽く概観するのが本書。
本書の魅力は、ポップなイラスト。

単純にいい感じのイラストが気に入って買った本。

イラストでわかる映画の歴史 いちばんやさしい映画教室

イラストでわかる映画の歴史 いちばんやさしい映画教室

  • 作者: アダム・オールサッチ・ボードマン,細谷由依子
  • 出版社/メーカー: フィルムアート社
  • 発売日: 2018/11/23
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る

映画の歴史をたどる際に、
期限をたどっていくと当然写真技術の話になる。

イギリスのエドワード・マイブリッジは、いくつものカメラを並べ、
馬が走る姿を写真に収めた。
これ、4つの足がどれも地面についていない瞬間はあるかの検証だったらしいのだけど、
それって別に写真撮らなくてもわかるのでは・・・

さらに映画の父と言われるフランスのルイ・ル・プランスは、
エジソンのライバルと言われていた人。
この人、自作のカメラの宣伝のために電車に乗って移動中、忽然と姿を消した。
謎の死は憶測を呼んで、エジソンによる暗殺が噂されたりもしたらしい。

エジソンは鑑賞者が覗き込むと映像が見られるキネトスコープと、
初めての撮影スタジオを作った。
その後、一気に広がったのはリュミエール兄弟
シネマトグラフという大画面に映し出された映像を大勢で鑑賞する
映画のスタイルだが、時代はまたVRゴーグルといった形で、
エジソン的な個人が鑑賞する覗き込みスタイルへの回帰が起きているとも言える。

鑑賞のスタイル自体が変化しようとしているのって結構面白いよなぁ。


イラストでわかる映画の歴史 いちばんやさしい映画教室

イラストでわかる映画の歴史 いちばんやさしい映画教室

  • 作者: アダム・オールサッチ・ボードマン,細谷由依子
  • 出版社/メーカー: フィルムアート社
  • 発売日: 2018/11/23
  • メディア: 単行本
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アンドロイドの自我、アイデンティティといったテーマを官能小説の皮で包んだような仕上がり。 小川一水/天冥の標 Ⅳ 機械じかけの子息たち

第四部はLoversたちの物語。

ラゴスはいかにしてラゴスになったかというこれまた
Loversの原形が成立する所の物語なんだけど、
最後までラゴスは脇役、のように見えて最後はやっぱりラゴスの物語なんだよね。

性欲処理用に作られた人造人間、アンドロイドがLoversたちなんだけど、
まぁそういうテーマだからここぞとばかり官能小説的な型を楽しんでいる。

アンドロイドの自我、アイデンティティといった
ブレードランナー的なテーマを官能小説の皮で包んだような仕上がり。

こうやって色々な時代の物語を巡りながら、
やがてメニー・メニー・シープにたどり着き、第一部の時系列に戻ってくるんだろうか。

各種族の救世群、アンチヨークス、Loversと各勢力の物語を読んだ今、
すでにまた第一部が読みたくなってきている。

巧みな大作だな。

第三部は少年の成長物語でもある。 小川一水/天冥の標 Ⅲ アウレーリア一統

第一部で出てきたアンチヨークス=海の一統のご先祖様のお話。

救世群に続き、アンチヨークスの先祖の物語はこれまた第一部の伏線に
そっと触れながら進んでいく。

関係は明示されないけれど、第1部で地下で発見したドロテアと同一名称の遺跡が出てきたり。
ご先祖様が住んでた街がセナーセーであることもわかった。
だからメニー・メニー・シープに移住した時に故郷の街の名前をつけたのかな??と憶測が広がる。

そして本作の主人公、アダムス・アウレーリアは中性的で魅力的なキャラクター。
強くて偉くて美しいけど、重責を担う中での葛藤も抱えてて、ちょっと脆そうな部分も魅力的。

色んな魅力的なキャラクターが出てくるけど、
アダムスはとりわけ絵になる主人公って感じのキャラ。

窮地を乗り越えていく様は少年マンガっぽくもあり、
アダムス自身の成長も描くビルグンドゥスロマンでもある。

シリーズを通じてやりたいこと全部やるってのはこういうことか。
物語の型というかジャンルもその時々で使い分けながら進んでいく。

いやー、見事だよね、面白い。