平安時代後期の『とりかへばや物語』をベースにした物語。
源氏物語などに比べると原作を読む機会は少ないかもしれないが、
こういった古典的な物語はかなり面白い、と言うことを再確認。
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「とりかへばや」は取り替えたいなぁって意味で、
何を取り替えたいかと言うと性別。
男の子らしい女の子、女の子らしい男の子を同時に授かった関白左大臣は、
お互いの本来の性を偽り、男らしい姫を男として、女らしい若君を姫として育てる。
二人とも出仕し始めると出世街道を進むのだけど、
嫁を貰っても本当は男じゃないし、入内しろといわれても、本当は女じゃないし・・・
この若干倒錯的な制約が物語をすごく面白くしている。
と、共にこのトランスジェンダーな感じはすごく今っぽいネタでもある。
例えば物語の中で、宰相の中将が若君(本当は女)に惹かれつつ、
自分は男色の気があるのか、おかしくなってしまったのだろうか、なんて
思い悩むシーンとかは本作ならではのユーモア。
現代の読者にとってはBLと百合が交じり合ったような作品なわけで、
なんというか色々てんこ盛りな感じ。
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で、そんな古典のコミカライズであるさいとうちほ『とりかえ・ばや』もいよいよ、
お互いが本来の性に戻りそうなところ。
本来の役割に戻った後の展開は楽しみではあるが、
おそらくそれはおまけ程度のものなんだろうなぁ。
やっぱ、お互いが秘密を抱え、本来の性を偽りながら
周囲の期待する役割を果たしていこうとするところがこの物語の肝だから。
話はちょっと変わるけど、
こういうちょっと変な物語と言えば『日本霊異記』には
いっぱい変な物語があったなぁ、と言うのを思い出した。
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全部読んだわけじゃないので、改めてこういう古典をしっかり読んでみるのも面白いかも。
昔の人の方が、色々おおらかで何でもありだよね。
時代と共に価値観とか社会的な規範って違うし、
無意識のうちにそういうものに人は縛られてしまう。
この物語自体、Wikipediaによると、ある時期とても批判的に評されていたらしい。
近代の一時期批判的に扱われていた。明治時代の国文学史上では例えば藤岡作太郎から「怪奇」「読者の心を欺く」「小説になっていない」「嘔吐を催す」などと評される事もあったが、近年ジェンダーの視点から再評価された。
Wikipediaより
文学って多様性の肯定だよな、ってことを改めて思ってみたりした今日この頃。