ミステリとか推理ものとか、その手のエンタテイメント小説には縁遠かったのだけど、
それはそれで楽しいよね、と思ったりもして来ていて、たまに世評の高いものを買う。
これもそんな1冊。なんか、評判良いし、何よりもタイトルになんか惹かれた。
深夜プラス1、意味はよくわからないけど良いタイトルだ。自分が夜型人間だからかな。
深夜プラス1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 18‐1))
- 作者: ギャビン・ライアル,菊池光
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976/04
- メディア: 文庫
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- 作者: ギャビンライアル,Gavin Lyall
- 出版社/メーカー: 講談社インターナショナル
- 発売日: 2002/04
- メディア: 単行本
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物語は無実の罪で殺し屋と警察双方に追われる実業家を護送する、というもの。
主人公はフリーランスのエージェントなのだが、アル中のガンマンとコンビを組んで事に当たる。
戦時中バリバリだったんだけど、時とともに第一線ではなくなっている感じというか、
時代の変化に自分が追いついていない感じというか、
なんかそういうおっさんの哀愁みたいなものが滲み出ている。
自分は何者で、どうありたいのか、みたいな葛藤。
戦争という異常事態から、その後の世界に馴染めない、ついていけない、ってのは
きっと凄くいろいろあったのだろうなぁ、というのは想像に難くない。
刊行当時の同時代性みたいなものは推察するしかないのだけれど、
そういう葛藤がヨーロッパ中にたくさんあったんだろうな。
で、なんかそういうちょっと昔を引きずってる感じを、物への執着とかで描くあたりがうまい。
そういう描写の力も、ハードボイルド。
例えば主人公のエージェントが今回の仕事のために用意した銃の描写。
俗に〈箒の柄〉といわれたあの旧式のモーゼル銃、特に全自動切り換え装置をつけた一九三二年型にまずい点は多々ある。
目方は三ポンドもあって全長一フィートもある。
握りの部分が不安定で、全自動で発射すると怒った猫のように手の中で跳ね廻る。
しかし、長所もあるのだ。
P.28
まぁ、要するに昔のまんま変わってない。戦時中の自分を思いっきり引きずってる。
あと、小説で面白いのは、ふとした瞬間になるほどねっていうリアルなエピソードが出てくるところ。
聞くところによると、ゲシュタポがだれかを訊問してどちらとも決めかねるときは、放す前に足に傷をつけた。
かりに一年くらいたって同じ人間が別名で別の身分証明書を持っていてつかまった場合、連中は足を見ればいい。
以前に疑いをかけられて訊問されたかどうかすぐわかる。
連中の低劣な考え方によれば、二つの疑いは一つの証拠になるというわけだ。
P.82
こういう話も真正面から資料調べても出てこなそうな話。
まぁ、それでもちょっと調べればあるのかもしれないけど、
小説内に出てくるこういうディテールって面白い。
深夜プラス1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 18‐1))
- 作者: ギャビン・ライアル,菊池光
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