『平原太平記』は手塚治虫、初の長編時代もの。
領地内の未開の平原を開拓する話なのだけど、
妨害や戦、天変地異など様々な苦難がのしかかる。
古い作品なのだけど、比較的普通に読めた。
ただ単に自分が古い漫画自体に慣れてきただけかもしれないが。
もう1つ収録されている『月世界紳士』はかぐや姫の翻案ものですこぶるつまらない。
- 作者: 手塚治虫
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ただ、手塚治虫漫画全集が素晴らしいのは、
作品がつまらなくても、手塚治虫自らのあとがきが面白いのだ。
『月世界紳士』が書かれた当時は、
月の裏側は観測されたことがなく、未知の世界だった。
なので月の裏側には大気があって、ウサギに似た人間が住んでいる、なんていう
設定のSFを描いたわけだ。
ところが、後年ソ連が月の裏側を撮影し、表側とほぼ同じと分かった途端、
この作品内での描写に対して、デタラメだと抗議が来たんだそうだ。
それに対して、
「夢やロマンが少しずつ失われていくのを、ちょっぴり悲しくも思ったものでした。」
と、述懐している。
いつの世もそうだけど、虚構を虚構として楽しめない大人は多い。
虚構は虚構だからこそ出せるリアリティのために虚構で良いのだ。
嘘をつくとかとは違う話。
だいたい現実もまた夢のようなものだよ。現世は夢。
まぁ手塚治虫が嘆く「夢やロマン」は、数十年の時が経っても意外と残っている気がする。
みんながみんな馬鹿じゃないし、むしろフィクションは世間を席巻しているくらい。
もちろん表現規制だの、面倒なことは増えているし、
何かと抗議してくる馬鹿もいるのは確かなのだけど、
「夢やロマン」は今なおそういうノイジーマイノリティに駆逐されずにちゃんと残ってる。
そんなようなことを思ったので、
たとえ面白くない作品でも、読めば読んだなりに、
何かを思うきっかけにはなるということだな。
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