物凄くいまさらなのだけど、
本棚整理していたら出てきたから読んでみた。
話の筋は高校生が人妻とコスプレ不倫して、
夫にばれて復讐される。
で、ネットに晒されて引きこもっちゃったりするわけだ。
ってな話なのだけど・・・。
まぁ確かにネットに晒されたら一生消えない。
この辺に関しては、近年プライバシー保護の観点から、
「忘れられる権利」という考え方も出てきているけれど、
未だにその実行性は微妙なところ。
- 作者: 窪美澄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: 文庫
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- 発売日: 2013/04/21
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ま、そんなことはさておき、本作に関して言うと、
登場人物のそれぞれが、心になんかしらの闇を抱えて
日常を生きている感じとか、
その闇への転落は、割と日常の中に潜んでいる感じとか、
その辺の生々しさが良く描けていた気がする。
女性が描くこういうリアリティって、男には描けない生々しさや
身もふたも無い感じを持っている気がして、
そこまで出せているととても面白い。
この作品で感心するのは、生々しさが生臭さに変わるような、
レバーみたいな血生臭さがちょっと出ているところ。
下品の一歩手前でギリギリ踏みとどまっている気がするんだけど、
まぁ嫌いな人は嫌いなんだろうな。
家が助産院っていう舞台も新鮮だったのだけど、
お産も言われなきゃAVの声と一緒ってのは、妙に納得。
たいして防音設備が整ってない普通の民家だから、産婦さんの苦しむ声はこの家のどこにいても聞こえる。
ちんこを入れたときも、その結果としてできた子どもを出すときも、同じ声っていうのが不思議。
お産の、って言われなきや、まんまAVの声だもの。
P.11
まぁ、出産って言うイベント自体がなんか聖性を帯びているから、
わからなくなっているけど、確かに色々滑稽なところがありそう。
その一方で世の中には不妊で悩む人たちもいる。
最後にわかったのは、私のおりものには、慶一郎さんの精子を異物と判断してしまう抗体があるということでした。
私は慶一郎さんを愛しているつもりですけれど、私のおりものは慶一郎さんの精子を拒否しているということです。
これは一体どういうことなんでしょうか。
私のおりものは慶一郎さんを愛してはいないのでしょうか。
考え始めると頭がもやもやします。
P.32
不妊治療はなんだか色々大変でえぐいらしい、っていう話は
チラホラ聞くけど当事者ではないので結局は良くわからん。
というか、当事者とそうじゃない人の間の乖離が激しすぎて、
互いのことを想像するのも難しいって感じか。
でも、そんな中でも嫁姑問題に不妊が絡んだときの面倒くささは、
世の中一般にもなんか共通の認識がある気がする。
やっぱこれってお世継ぎ産んだ女が偉い!みたいな文化が長かったからなのかな。
まぁでもこういう粘っこくて生臭い描写できるのは間違いなく才能だと思うので、
小さくまとまらずにその才能を伸ばしていって欲しいな。
軽い嫌悪感感じさせるくらいの文章書けるのって凄いことだから。
あと、こういうシーンも女性特有の冷めた視点を感じて面白い。
机の上には、お兄ちゃんが写真を飾っていた、やたらに目力の強いおじいさんが表紙になった一冊の本が置かれていた。
その本をパラパラとめくってみると、一ページ目に「過去を捨て去れ。今を生きろ」とだけ書かれていた。
お兄ちゃんに捨てる必要のある過去なんかあるのかなーとあたしは思った。
ママの作ったハンバーグやコロッケをぱくついて、パパにぬくぬくと守られて勉強だけしてきたようなお兄ちゃんに。
P.86
まぁステレオタイプな話になるけど、男はなんかこういう観念的なの好きよね。
今を生きろ、みたいな。
でも傍から見てるとそういうのに夢中なところも滑稽よね。
その、は?なに言ってんの??感がよく出てる一節。
で、最後に気になったのが、この一節。
父親になったのだから、きちんと仕事をしてほしい、そんな正論を大声でふりかざした。
そう言いながら、いつも、カルピスを飲んだあとに舌に残るもやもやしたかたまりのようなものが、私の心の中に残った。
彼の自由な生き方を無責任におもしろがって結婚したくせに、子どもが出来た途端、夫や父親としての責任を彼につきつけた。
それまでは、家事はできるほうがやればいい、生活費は出せるほうが出せばいいと、物わかりのいいふりをしておきながら。
彼と私と、そして生まれてきた卓巳と、どう生きたいかを考えもせず、探りもせずに、耳馴染みのいい世間の良識を、焼き印のように彼に押しつけたのだ。
P.194
多かれ少なかれ、子供が生まれると女は変わる。
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