緊張と緩和。
これが物語に人を惹きつける基本なんだと、誰かが言っていた気がするんだけど、
まぁ、大筋それには同意する立場。
で、物語の緊張感は制約があればあるほど盛り上がる。
そのための舞台設定ってとっても重要だと思うのよね。
で、この小説は舞台が東北新幹線。
その設定を聞いた瞬間、あ、これは面白いんだろうな、と思ったのでした。
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2013/10/09
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新幹線はサスペンスの舞台としては最高。
移動中は密室。
行き交う人、でも隠れられる場所は少しだけある。
駅に着けば、逃げるチャンスも、助っ人も、あるいは新たな敵さえも出てこられる。
つまり、物語に新たな条件を追加していけるわけだ。
どうする?どうする!?どうするのよー!?!?!?ってのが緊張であり、
そこを無事に乗り切ることでふぅっと安心するのが緩和。
そしてこの緩和が、カタルシスなんだよな。
というわけで、電車は古今東西物語の名舞台として登場してきた。
アガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』も電車が舞台であり、
その舞台設定が故に引き込まれるっていう側面があるよね。
- 作者: アガサ・クリスティー,山本やよい
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/08/01
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ジョジョでも電車を効果的に使ったストーリーがあったよね。
あれって5部だっけ?6部だっけ??
物語の中身とは関係ないけど、まぁ、舞台設定からして秀逸なんだよ、この小説は。
そして登場人物もどこか変な人たちばかりで好感が持てる。
二人組の殺し屋、檸檬と蜜柑、好きだな。
ちょっとバカなんだけど、トーマスが大好きっていう設定も最高だぜ。
そしてこの物語の舞台が電車である以上、電車が好きなキャラクターはいるべきだし、
だからと言って鉄オタではなく、トーマスが好きというずらし方で持ってきたこの演出に勝手に感動。
この作品きっかけで、アマゾンプライムビデオで子供と一緒にトーマス見はじめちゃったからね。
↓これ
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というわけで、伊坂作品をそんなに読んでるわけじゃないのだけど、非常に面白かったです。
物語として面白いだけではなくて、色々なウンチクが詰まってるのも魅力なのよね。
人との関係におけるヒエラルキー的なことにおいても、下記の文章は非常に鋭い。
友人同士の会話の中で、「ださい」であるとか、「しょうもない」であるとか、「くだらねー」であるとかそういった、否定の言葉をさりげなく用いることで、ある種の力関係を作り出すことができる、と知っていた。その、「ださい」「くだらない」にまったく根拠がないにもかかわらず、影響力がある。「君のお父さん、ださいね」であるとか、「君のセンスは目も当てられない」であるとか、相手の重要な根幹を、曖昧に否定することは有効だった。 そもそも、自分の価値観にしっかりとした基準や自信を持っている者は多くない。特に年齢が若ければ、その価値の基準は常に揺れ動いている。周囲に影響を受けずにはいられないのだ。だから王子はことあるたびに、確信を匂わせ、侮蔑や嘲笑を口にした。すると、それが主観を超えた客観的な物差しとなり、相手との立場の違いを明確にすることがよくある。
いわゆるマウンティングのノウハウ的なものだけど、
確かにこう行った振る舞いは人よりも優位な立場に立ちやすい。
こういう薀蓄もまた小説の愉しみだよね。
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