ジャズのパトロン、ニカ男爵夫人。
チャーリー・パーカーは彼女のホテルの部屋で死んだし、
セロニアス・モンクの個人的なパトロンとしても活動していた。
そんなニカは実はロスチャイルド家のご令嬢。
でも男性相続で女性はかなり飾りとしての人生を強いられる世界に
我慢ならず、飛び出してきた人でもある。
なのでこれはモダンジャズの黎明期にミュージシャンたちを支えたパトロンの記録でありつつ、
一人の女性が閉鎖的な家庭を飛び出て自由に生きた話でもある。
陰謀論などで語られることの多いロスチャイルド家の内幕を描いた物語でもあるし、
ユダヤ人の迫害と黒人差別の記録でもある。
規則正しすぎる生活。
16歳まで親と一緒に夕食をとることはない、とか。
前半はロスチャイルド家の日常。
実際にニカがニューヨークでパトロンとして活動していた時期の話は
後半以降で意外とボリューム少ないんだよね。
伝記や評伝はその人の人生の記録を通じて、
意外な事実や人間性を垣間見えるところが好きなんだけど、
ただ、大抵の伝記は小説よりもそういう人間性に触れる瞬間、みたいなものの
密度は薄い気がする。
まぁ、それを描き出そうとして書かれたものではないので当然なのだが。
人間の決して綺麗事だけではないエゴとか感情とか、
そういうのが好きなんだなぁ、というのが年を経るにつれ
強く自覚できるようになってきた。
- 作者:ハナ・ロスチャイルド
- 出版社/メーカー: 月曜社
- 発売日: 2019/02/27
- メディア: 単行本