Book Select 本を選び、本に選ばれる

読んだ本にまつわる話を書き綴っていくことにしました。マンガが大半を占めていますが小説も好き。マンガはコミックで読む派。本は買って読む派なので常にお金と収納が足りません。例年1000冊以上コミック読んでます。ちなみに当ブログのアフィリエイト収入は昔は1000円くらいいった時もあったけど、今では月200円くらいです(笑)みんなあんまりマンガは買わないんだなぁ。。収入があった場合はすべて本の購入に充てられます。

自分の欲望に素直な飽くなき探求。ハッピー・オーラ、ハッピー・エレガント、ハッピー・ナイスボディ。 野崎幸介/紀州のドン・ファン

買ってずっと積ん読になっていたのだけど、
先日お亡くなりになったそうで、ご冥福をお祈りします。

金を稼いでいい女を抱くという、己の欲望を素直に表出している姿は、
なんとも清々しい。

今ドームの訪問販売から一代で財をなし、
金の力で良い女を抱きまくるという三流小説じみた物語を
実際に生きた人間のドキュメント。

事実は小説より奇なり、を体現するような本だった。



ただ、札束の力だけでなく、創意工夫があるのが面白い。
例えば名刺は特殊な名刺で中に1万円を入れておくんだそうな。
飛行機乗ったら好みのCAに挨拶がわりに名刺を渡す。

そうすると、あとでお金が入っていることに気づき、
困ります、いただけません、と連絡がもらえる、という仕組み。
そこから口説くというなんとも考え抜かれた戦略。

1回30万円程度のお小遣いで抱いていたらしいのだけど、
これくらい数こなしてると、変な執着もなくしつこくなくてアッサリしてるのかもね。

個人的に気に入ったのは、ナンパするときの声の掛け方。

「ハッピー・オーラ、ハッピー・エレガント、ハッピー・ナイスボディ。あなたとデートしたい、エッチしたい」って
声かけるらしいのよ。
もうなんだか意味わからないけど陽気なおっさんだし、
自分の要求をストレートに伝えるというのは
とても大切なことなのかもしれない。


↑結婚してからの続編もあるらしいので気が向いたらそっちも読んでみようかな。


ふとした瞬間にあらわれる豊かな表現との出会いを楽しむ。 フランティシェク・クプカ/カールシュタイン城夜話

チェコ版『千夜一夜物語』と評される物語。

毒を盛られた王が城で養生している間、三人の家臣と夜毎に
女の話をして無聊を慰める、という形式。

王も自分の想い出話を語り出すのがちと新鮮。
王だけはいつも自分の女の話。

カールシュタイン城夜話

カールシュタイン城夜話

特別面白いお話があるわけでもないのだけど、宗教や文化という土台の上に成り立つ、
古風な表現が興味深い。

例えば、悪魔はとても性欲に満ちた存在として表現される。

彼女は昼も夕方も悪魔と同じくらい彼と愛し合っているが、世間は彼女が淑徳に満ちていると思っているのだ。
P.85

他にも、薔薇が美しいものの象徴として度々登場したり、とか。
中でも秀逸だなと思ったのは、口づけの描写。

彼女がもう一度私に笑いかけ、私は彼女の腰を抱いて口づけをした。この口づけは四枚の薔薇の花びらが触れ合ったようだった。
P.96

こういった、魅力を伝える表現がなんとも奥ゆかしく、趣深い。
さらに、女性が歩くだけでも、こうなる。

彼女が門を出ればさながら早春がやって来たかのようで、水溜まりは虹のように輝き、いかめしい壁は野薔薇のように身を装った。
P.171

このくどさもまた味である。

そして本作で一番好きなシーンは、苺でできた白いスカートの染みを口づけで吸い取ろうとするシーン。

私はスカートの前に跪き、近づいてその染みを眺めた。その時この染みを着物から吸い取ろうという考えが浮かんだ。私は彼女にそうさせてほしいと言った。彼女は本当におまじないで取るのだと思って頷いた。白いスカートの赤いところに触れた時、私は唇の下に尖った暖かい女の子の膝小僧があるのを感じた。それは幻であり、思いもかけない謎であり、美しく魅惑的だったので、私は飛び上がって彼女を見た。きっとその目に私の興奮を見て取ったのだろう、どうして途中でやめたの、と聞いた。
P.94

ここには瑞々しい性の目覚めみたいなものが表現されているね。
物語がどうというよりは、こう言った豊かな表現にふと出会えることを楽しんだ本。

カールシュタイン城夜話

カールシュタイン城夜話

ノンキャリアの賄賂疑惑から、官房機密費をめぐる巨額の横領事件へ 清武英利/石つぶて

これは主に汚職を取り締まる警視庁捜査二課の一時代のルポ。
外務省のノンキャリアが贈収賄に絡んでいる、そんな情報提供からすべては始まった。

ところが、捜査を進めるうちに、その官僚が扱っているのは想像以上にヤバい金だったことが判明。
そう、総理の外遊などを取り仕切る際の官房機密費の横領だったのだっていう展開。

事実は小説より奇なりとはよくいったもので、本当に下手な推理小説なんかよりも面白い。

石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの

石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの

本書は外務省のノンキャリア、松尾が起こした実際の事件の捜査ルポ。
収賄や横領といった組織の闇を調査する捜査二課をリアルに描きながら、
同時にその二課の文化は今では失われてしまっていることもほのめかしている。

上司と言えども情報源は明かさない、どこで何をしているかは同僚にも悟られないように行動し、
いよいよ、というタイミングまで何を調べているのかも秘匿しながら進む世界(だった)。

彼は「情報はナマモノで、一日遅れると腐って死んでしまうものもある」と信じて疑わない。鮮魚のようなものだ。だから、上司の叱責を恐れて取材源から足が遠のくということは、生きた情報を殺すことだと思っていた。

ただ、現場に信じて任せて、放任する度量が今は失われてしまっている。
管理しようとすればするほど、情報は漏れる。
漏れるところに情報は集まらないし、ごく当たり前のように、これ以上調べるなという圧力もある様子。

本書には失われてしまったものを懐かしむ、一抹の寂寥感も漂っている。

一度捜査が始まると、職場に泊まり込み、数ヶ月家には帰れない、といった生活をしながら、
地道な捜査で不正を明らかにしていく様は、尊敬の念しかない。

この外務省の事件の端緒をつかんだ中才刑事は中でも飛び切り愚直な性格。

「一介の刑事にとって、喫茶店やホテルでのコーヒー代や軽食代は馬鹿にならないんだ。毎回一〇〇〇円とか二〇〇〇円するからね。中才は捜査費なんかあてにしないで、いつも自分で払っていた。これが意外に難しいことなんだよ。いい情報を取るのにきれいごとは言ってられなくてね、真面目な男や臆病な奴はたくさんいるんだが、仕事ができて卑しくない、という生き方はなかなかできないことなんだ」

なんか、もう頭がさがる。

と、同時に色々考えさせられる。

地位の高い収賄者に内心を語らせるには、人格を破壊するほどの執拗な取り調べが必要だ、と考える刑事である。中背で熊のように首をすくめ、取調室で「この野郎!」と凄んだり、べらんめえ調の胴間声で罵ったり、やくざの頭を殴ってでも(やくざが贈賄容疑者ということもあったのだ)自供を引き出そうとしたりする。中才同様にほとんど酒を飲めないのに、酒に酔ったようにまくしたてた。  役人、それも官僚のような知識層の良心を信じていないのだ。かつてあったにしても、それは前例踏襲や忖度、保身の塵の中に埋もれ、心の奥底に澱のように沈み込んでいて、魂を揺さぶらない限り、正体を現さないと思っている。

怒声が飛びかうような取り調べがいい事だとは思わないが、
一方で丁寧に聞いて答えてくれるんなら苦労しないというのもわかる。

取り調べの録画など、捜査の公明正大さを求めた結果、失ったものも大きいということ。

政治家や官僚といった権力者たちの不正が暴きづらくなっている世の中、一体どうすりゃいいんだろね。

ちなみに本書に出てくる羽生田さん自身が書いた本も出ているので合わせておすすめ。

警視庁捜査二課 (講談社+α文庫)

警視庁捜査二課 (講談社+α文庫)

この事件でも活躍したベテランが、定年間際に辞表。
そういう組織になってしまったということなのだろう。
こちらの本からも現状を憂う気持ちが伝わってくる。。

ちなみに本書の著作者、清武さんは
読売巨人軍の球団社長、GMナベツネともめて辞めた人という印象だったのだけど、
なんというか、素晴らしいルポを書く方なのだな。

これまでの著作も拝読したい。

石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの

石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの

桃栗三年、柿八年、アルスラーンは三十年。 田中芳樹/アルスラーン戦記

漫画化され、アニメ化されると共に、
え、完結してなかったの!?という衝撃を与えたアルスラーン戦記が、
ついに、完結した!!!

王都炎上・王子二人 ―アルスラーン戦記(1)(2) (カッパ・ノベルス)

王都炎上・王子二人 ―アルスラーン戦記(1)(2) (カッパ・ノベルス)

天涯無限 アルスラーン戦記 16 (カッパ・ノベルス)

天涯無限 アルスラーン戦記 16 (カッパ・ノベルス)

そして最終の16巻の著者コメントに書いてあったのが
「桃栗三年、柿八年、アルスラーンは三十年。」なのである。

三十年。
長い。

長かったが、まずは完結したことを喜ぼう。
未完の大作にならなかったことは素晴らしいことです。

twitterやブログなどで、あっさり死にすぎ、
キャラへの愛がなくなってしまったのではないか、
なんて言われてたけどみんなも三十年たって忘れてしまったのだろうか。

この人、皆殺しの田中という異名を持った作家さんだよ。
アルスラーン戦記はこれまで死なな過ぎただけ。
その物語が完結するということは、すなわち皆殺しということだよ。



王都炎上・王子二人 ―アルスラーン戦記(1)(2) (カッパ・ノベルス)

王都炎上・王子二人 ―アルスラーン戦記(1)(2) (カッパ・ノベルス)

天涯無限 アルスラーン戦記 16 (カッパ・ノベルス)

天涯無限 アルスラーン戦記 16 (カッパ・ノベルス)

一年戦争からZガンダムまでの間に何があったのか?シャアとハマーンの物語。 北爪宏幸/機動戦士ガンダムC.D.A.若き彗星の肖像

アニメでは描かれていない一年戦争後から、Zガンダムまでの間を描く意欲作。
シャアはいかにしてクワトロ・バジーナになったのか、
シャアとハマーンの間に何があったのか。

正史では語られぬ歴史の隙間を埋めてくれる作品。


そんなこと言われたらガンダムファンなら気になっちゃう訳で、読まずにはいられない。

語られていない歴史の合間を埋める物語としては、とてもよく出来ていて、
そうか、二人にはこんな事があったのかと・・・。

北爪宏幸自身は、これが真実だとは言ってなくて、
こんな事があったという解釈も成り立つのではないか、と考えながら描いたと語っていた。
そう、これは現時点でもっとも蓋然性が高い推測を交えた歴史物語なのだ。
そしてそれは否定される根拠もなく、有力な仮説として存在している。

そう、記録に残っていない、語られぬ歴史であるが故に、
この物語は常に第三者視点で語られる。
それは、これが歴史書だから。

だからこそ、シャアやハマーンに感情移入できるかというとそうはなっていない。
漫画として面白いかはちと別問題なのである。

でもね、歴史書っていうコンセプトでいけば、この引いた視点で物語ることは妥当だと思うのよね。
でもそれだとつまんないから、改めて歴史書ではなく、歴史小説のような物語としてこの話は見たい。

北爪宏幸は物語の構成は良いから、原作で作画というか漫画としての表現は誰か別の人つけたほうが
盛り上がるような気がする。

手塚治虫が週刊少年ジャンプに連載していた短編を集めた隠れた名作!! 手塚治虫/ライオンブックス

全集を順番に読んできて、やっと辿り着いたライオンブックス。
何がやっと、なのかというと、、、これ、面白いんです!!

ほとんど今読むとつまんないよね、ってのがしばらく続いてたんだけど、
「ライオンブックス」は今読んでも面白い。

そもそもタイトルからして意味不明だと思うんだけど、
決して「ジャングル大帝」みたいな動物ものではありません!!

これは手塚治虫のSF短編集を集めたもの。
ライオン、関係ありません!!

しかも、週刊少年ジャンプに連載していた短編作品集なのです。

中には近未来を描いたものとかもあり、
今話題の「AIの遺電子」を彷彿とさせるようなものも。

www.book-select.com


いやぁ、ほんとこの作品は、タイトルがタイトルだけに、
全集片っ端から読もうとしなければ出会えなかったなぁ。

というわけで、自信を持ってお勧めできる手塚作品でした。

ちなみに全7巻のようですが、全集においては巻数がとても離れており、
ひとまず1〜5巻までが最初に刊行されております。


文章から夜の匂いがする、14年ぶりの新作が発売された伝説の作家の処女長編。 原りょう/そして夜は甦る

原りょうのことを知ったのはつい最近、
早川書房さんのTweetがきっかけだった。

とても寡作な作家らしく、3月に14年ぶりの新作が出たのだ!
これはちょっと気になる、というわけで、今さらながら読んでみた次第。

で、これまで出ている長編は4作品。
今から呼んでも新作発売までに追いつけるわけです。良書との出会いにおいてTwitterって便利だなー。

そして夜は甦る

そして夜は甦る

処女長編は行方不明になったルポライターの捜索を依頼されるお話。
謎が謎を呼び、思いもよらぬ事件へと繋がっていく。

まったく関係なさそうな事件が絡み合う、そこに至るまで物語りは一歩ずつ、だが着実に進んでいく。
その物語のどっしりとした推進力、決して軽快ではないのだけど、力強い推進力もハードボイルド。

そしてラストの意外な結末。

神としての作家の恣意的な力が透けて見えるきらいはあるけれど、
それでもしっかりオチをつける面白さなのだろうし、
そこが気に入らなかったとしても、結論だけが物語の愉しみというわけでもない、とも思っている。

沢崎という魅力的なキャラクター、特に会話などの端々に出てくる
時にシニカルな物言いこそハードボイルドの魅力なんじゃなかろうか。

著者自身もジャズピアニストということもあり、文章から夜の匂いがするんだよね。

愛情や真実や思いやりのほうが、憎しみや噓や裏切りよりも遙かに深く人を傷つけることを考えていた

とか

真実というのは、ばれない噓のことだ──

とか。

難しいこと考えずに、かっこいいぜ原りょう
そして新作がめっちゃ楽しみ。

ちなみに14年ぶりの新作はこちら

それまでの明日

それまでの明日

さて、他の作品も読んでみよう!

そして夜は甦る

そして夜は甦る