本は好きでずっと読んできたけれど、
SFも、ミステリーも、あまり通過しないまま来てしまったことが
何か損しているような気がして生きている。
全く読んだことがない訳ではなく、
それこそ本書で紹介されるようなコアなSFの作品たちは、
国書刊行会の未来の文学シリーズで、ちょっとだけ齧ったこともある。
が、いまいちハマれなかった印象だけが残っている。
だもんだから、なんかこの本を読んだらもっとSFの面白さにも
開眼するのではないかと思って読んでみたのだけれど・・・。
本書は、若林正の乱視読者シリーズの1冊で、氏の夢でもあったSFがテーマの1冊。
序盤は大学の講義録であり、思い入れのある作品たちを題材に講義が展開されていく。
SFを読むと言うことがどういうことなのか、というイメージは掴めた。
少なくとも、それなりに難解で、丁寧な読みが必要であると言うことは良くわかったし、
それには一度、1つの作品を気合い入れて精読してみると視界が開けるような気もした。
でもその一方で少し楽しむことの敷居の高さも感じてしまった。
ジーン・ウルフ『ケルベロス 第五の首』とかは気にはなるし、
国書刊行会から刊行された当時、何も知らずに買っていた気はするのだが、
果たして読んでみてハマれるもんだろうか。
本書の中でも数多く言及される作家ジーン・ウルフ、
確かにそこまで色々と書かれると興味をかき立てられはするのだが、
結局その細部は自分には読み解けないのではないか、という気持ちにもなった。
まぁ、それならそれで良いのかもしれないが、
本書に書いてあったウルフを理解したければナボコフを読めと言う話も気になった。
要するに、それだけやっかいな、それでいて素晴らしい作家であり、作品なのだろう。
でも、一方で読み方なんてものは自由でもある。
自分が楽しめるかどうかが重要なのだけれど、
難解で挫折、という展開にもなりかねない。
まぁあまり無理せず、楽しんでいきたいけれど、
どうも難解なイメージを持ってしまったので尻込みしてしまうかもしれない。
ちなみにもう一人面白そうだなと思ったのがスタニスワフ・レム。
特に『完全なる真空』は架空の書評集というのが気になる。
まるでボルヘスの様だけど、こういう一筋縄ではいかない感じの世界は、
読みたいような読みたくないような、変な気持ちになってしまう。
結局自分自身このジャンルに親しみがないので、
こういった評論を読んでみた時に、ついていけない気がしてしまうのだろう。
読みの巧みな評論は彼我の差が際立つのでなおさら。
さて、どうしたもんかな。