Book Select 本を選び、本に選ばれる

読んだ本にまつわる話を書き綴っていくことにしました

身も蓋もない言葉こそ真理。この人のエッセイはもっと読みたい。 本谷有希子/かみにえともじ

マンガ雑誌のモーニングに連載されていたコラムを1冊にまとめた本。
イラストを榎本俊二が担当っていう不思議な魅力の組み合わせ。

連載時に何度か読んだことがあって、面白かった記憶があったので、
単行本化された際に買っといた。
本谷有希子は才能あふれる劇作家、演出家であり、小説家なのだけど、
これ以外の本も作品にも触れていないので、いつか劇場にも足を運びたいし、
色々と読んでみたい。

かみにえともじ

かみにえともじ

エッセイを読む面白さがどこにあるかと言えば、
大きく2つあると思っていて、
1つは面白い視点、もう1つは言葉にできなかった感覚を言葉にしてくれたことへの共感だ。

それと、あんまりかっこつけてるものよりも、身も蓋もないような話の方がより面白い。
本書も、所々で繰り出される身も蓋もない本音、みたいなくだりが、
時に新しかったり、時にもの凄く共感してしまったりする。

そういう感覚をちゃんと言葉にできる所が劇作家としての才能なのかな。

例えば・・・

同業者と初めて会う時、私は必ず気遣って「期待してませんよ」という
オーラを全力で出すように心がけている。
「自分のことおもしろく見せようとしなくていいんですよ。
だって作品がおもしろいんだから、それでいいじゃないですか」
という感じを全毛穴から放出しようとしている。
極論だが「作品がよければ、もう豚だっていいじゃない」と人に言ってほしい。
P.10

何という心配り!

だって私は人に認められるのが大好きなのだ。
もう日常のすべての挨拶が「認めます」でいいんじゃないかとすら思う。
「おはよー」って必要? 「認めまーす」でよくない? 
「いってらっしゃい」ってもう「認めまっしょい」で誰も困らなくない?
P.12

承認欲求からは逃れられないからね。
この方がめんどくさくないかもしれない。
認めまーす。

昨日も取材で新作の小説について、こんなふうなやりとりをした。
「本谷さんは、ここに書かれているような弱い人たちを応援しているということですか?」
「……応援? してないですね。特に。
勝手に生きればいいと思いますよ」
P.50

勝手に生きればいいよね、他人なんて。

人間って全部が全部本当のこと喋ってるわけじゃないじゃーん。
半分かそれ以上、ノリじゃーん。
その場の瞬発力のない会話なんてなんの意味があるの?
P.50

確かに、ノリじゃーん。
楽しい方が良いかなと思って言ってみたりするよね。

♪ああ~、いつかあの人たちがもう少し私のことパシリみたいに扱わなければよかったと~思う時が来ればいいのに~。
私は地獄の門番になりたいな。
地獄行きか天国行きかの決定権が私にあったことを、全員が死んだ後に知る。
「うわああ!だったらあの時あんなふうに雑に扱わなきゃよかったああああ」って思われたいな~♪
P.67

あぁ、もう魂の叫びだね。

というわけですこぶる面白い。
いいエッセイ集だった。

ちなみに、イラストの榎本俊二もいい感じで、
2冊で終わってしまった超傑作(と個人的には思っている)『ムーたち』の
ムー夫がたまに出てきた。
これはこれで感動。

ムーたち(1) (モーニング KC)

ムーたち(1) (モーニング KC)

ムーたち(2) (モーニング KC)

ムーたち(2) (モーニング KC)

いずれにせよ、また連載しないかな。
もっとたくさん書いてほしい!

かみにえともじ

かみにえともじ