現在刊行中の『筒井康隆コレクション』の2巻の表題作。
いわゆる「世界の終わり」がテーマで、
筒井康隆自身、このテーマには強い関心があった模様。
作家は一度このテーマで書いてみるべきだとすら言っていた。
- 作者: 筒井康隆,日下三蔵
- 出版社/メーカー: 出版芸術社
- 発売日: 2015/02/18
- メディア: 単行本
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- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1974/08
- メディア: 文庫
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筒井康隆の小説はずっと読まずに過ごしてきた。
今回のコレクション刊行で初めて手に取った次第。
初めて読む作品がこれで良いのかは良くわからんけれど、
一読してちょっとシニカルなユーモアがある人だってことはわかった。
物語は、本当にくだらないケンカが元になって、中国が核ミサイルを誤射。
ソ連とアメリカはお互いが相手からの攻撃だと勘違いして、
報復攻撃、世界の巨大都市は一瞬で消え去り、日本にも核ミサイルの脅威が迫る。
世界が一瞬のうちに戦争状態になり、次の瞬間には自分の目の前に
核ミサイルが飛んでくるかもしれないという極限状態になった日本、および世界の混乱ぶりを
皮肉なコメディタッチで描いている。
世界のピンチを誰かが救うようなヒーロー潭ではなく、
極限状態は人の愚かさや滑稽さを描写するための設定に過ぎない。
利己的な行動に走る人、絶望する人、自暴自棄になる人、
色々と愚かなエピソードが次から次へと展開されていく。
でもきっと人間ってそれくらい愚かで滑稽なところがあると思うし、
実際こんな状態になったら理性的でいられる人なんて殆どいないのかもしれない。
まぁナンセンスな空想ものと言ってしまえばそれまでかもしれないけれど、
冷戦時代、一歩間違えれば核戦争、というリスクは存在していた訳で、
荒唐無稽なこんな世界と現実は意外と近い所にあったのかもしれない。
そして、解説で小松左京がスラップスティックSFって評していたけれど、
たしかにスラップスティックな感じ。
軽妙に次から次へとエピソードが展開していく。
きっと時代の空気みたいなものを捉えながら、料理していくのが、
とても上手なのだろう。
正直、今まで断筆騒動のあった昔の人のイメージだったけど、
この人が今の雰囲気を捉えた同時代的な作品を読みたくなった。
今でも、このシニカルな時代感覚は健在なんだろうか?
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