『惡の花』でちょっぴりメジャーになった押見修造の初期作品、
それが『スイートプールサイド』だ。
ではこの漫画のテーマはプールなのか。
違う、「毛」だ。
体毛が薄いツルツル男子と、剛毛のボーボー女子が織りなす青春の1ページ。
自分では上手く剃れない女子の体毛を代わりに剃ってあげるというだけのお話なのだが、
剃毛という行為にはなんだか倒錯的な香りがする。
本来見せたくないもの(=毛)を除去する行為自体は、
一般的なものでありながらも、日常の中では表に出ることのない行為だ。
それを異性に任せることで生じる両者の緊張と羞恥が、倒錯性や背徳感を盛り上げる。
- 作者: 押見修造
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/08/09
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剃毛という行為には剃刀という道具が絡んでくるところもポイントなのだろう。
鋭利な剃刀は死を連想させるモチーフだし、
剃刀を持った他者に身を任せるということは命を預けることでもある。
いわゆるエロスとタナトス、なんだな。
これってまさに『剃刀日記』の世界に通じるものが少しだけある。
『剃刀日記』にも死者の顔を剃りに行く話が出てくるけど、
あの話の妖艶さはまさにエロスとタナトスなんだよな。
最近の漫画家の中でもすごく作家性を感じるのよね、押見修造には。
あぁ、押見修造っぽい、っていう作風を確実に身につけている人。
思春期の悶々とした男女を題材にエロ、グロ、ナンセンスをうまい具合にバランスさせて、マンガにしてる。
時に身も蓋もなく語られる煩悩、欲望に振り回される人々には、むしろものすごい素直さを感じる。
人間なんて欲望の塊。
化けの皮1枚剥がせば、みんな煩悩に振り回されてたりするでしょう。
それが本性だと思うし、そういう人の本性に迫るっていう意味では、
ある種文学的なんだよね、この人。
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