毒を盛られた王が城で養生している間、三人の家臣と夜毎に
女の話をして無聊を慰める、という形式。
王も自分の想い出話を語り出すのがちと新鮮。
王だけはいつも自分の女の話。
- 作者: フランティシェククプカ,Franti〓ek Kubka,山口巖
- 出版社/メーカー: 風濤社
- 発売日: 2013/02/01
- メディア: 単行本
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特別面白いお話があるわけでもないのだけど、宗教や文化という土台の上に成り立つ、
古風な表現が興味深い。
例えば、悪魔はとても性欲に満ちた存在として表現される。
彼女は昼も夕方も悪魔と同じくらい彼と愛し合っているが、世間は彼女が淑徳に満ちていると思っているのだ。
P.85
他にも、薔薇が美しいものの象徴として度々登場したり、とか。
中でも秀逸だなと思ったのは、口づけの描写。
彼女がもう一度私に笑いかけ、私は彼女の腰を抱いて口づけをした。この口づけは四枚の薔薇の花びらが触れ合ったようだった。
P.96
こういった、魅力を伝える表現がなんとも奥ゆかしく、趣深い。
さらに、女性が歩くだけでも、こうなる。
彼女が門を出ればさながら早春がやって来たかのようで、水溜まりは虹のように輝き、いかめしい壁は野薔薇のように身を装った。
P.171
このくどさもまた味である。
そして本作で一番好きなシーンは、苺でできた白いスカートの染みを口づけで吸い取ろうとするシーン。
私はスカートの前に跪き、近づいてその染みを眺めた。その時この染みを着物から吸い取ろうという考えが浮かんだ。私は彼女にそうさせてほしいと言った。彼女は本当におまじないで取るのだと思って頷いた。白いスカートの赤いところに触れた時、私は唇の下に尖った暖かい女の子の膝小僧があるのを感じた。それは幻であり、思いもかけない謎であり、美しく魅惑的だったので、私は飛び上がって彼女を見た。きっとその目に私の興奮を見て取ったのだろう、どうして途中でやめたの、と聞いた。
P.94
ここには瑞々しい性の目覚めみたいなものが表現されているね。
物語がどうというよりは、こう言った豊かな表現にふと出会えることを楽しんだ本。
- 作者: フランティシェククプカ,Franti〓ek Kubka,山口巖
- 出版社/メーカー: 風濤社
- 発売日: 2013/02/01
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