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Book Select 本を選び、本に選ばれる

読んだ本にまつわる話を書き綴っていくことにしました

探偵も殺人事件もないけれど、凡庸な主婦が他人の人生を殺す。あぁ、これは嫁ブロック小説だ。 アガサ・クリスティー/春にして君を離れ

今まであまりミステリーにはハマってない。
ミステリーとSFはほとんど読んだことがないのだ・・・。

SFよりはミステリーの方がとっつきやすいような気がしてるんだけど、、、。
それでもこの本を読んでみようと思ったきっかけは天狼院書店の記事でした。

そして、こんな形のミステリーもあるんだなってのが新鮮な作品だった。

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫ - 天狼院書店

書かれている通り、この作品では探偵も登場しなければ殺人事件も起こらない。
主人公は自分の価値観に従って正しく生きてきた凡庸な主婦。
夫のことも、家族のことも愛しているし、
すべてうまくいっている幸せな人生だと信じて疑わない。

ただ、あまりにも盲目的に生きていて、無自覚に繰り出される正しさが、
時に人を追い詰め、傷つける。

例えば、夫は弁護士やめて田舎に引っ込んで農場経営したかったのに、
そんな生活は妻の価値観の中には無いわけだ。
男性特有の一時の気の迷いに流されてはいけないってんで、嫁は夫を諭し、導こうとする。
それが妻としての自分の役目だと信じて疑わない。
現代で言うところの嫁ブロック。

結局、この物語の主人公は人は殺してないけど、そうやって無自覚に人の人生を殺してる。

そういう人生の機微を描くのも素晴らしいが、
それだけで終わらないラスト。

何だろうこの読了感。
人は簡単には変われない。
愛とか惰性とか忍耐とか、いろいろ考えさせられる作品。


春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)