ドラマ『半沢直樹』の大ヒットで一躍超有名作家になった池井戸潤。
でも彼はなるべくしてなったと言うか、昔からいろんな業界をテーマにした
面白い小説をたくさん書いている。
『鉄の骨』は建設業界を舞台に談合問題を取り上げた小説。
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NHKでドラマ化もされていて、主人公役はなぜか小池徹平がやってる。
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かくいう私も、この作品をはじめて知ったのはドラマをちら見したことがきっかけ。
途中から少し見ただけだから話は良くわからんものの、なんだかすごく面白そうだぞ、と。
で、原作調べたら池井戸潤じゃないか、と。
銀行もそうだけど、建設業界も慣習などに縛られている古い業界。
理想と現実の狭間で苦悩しながらも成長する物語を書くには理想的な舞台じゃないか。
主人公の平太はある日突然現場から本社業務課への異動を命じられる。
でもその業務課ってのが別名談合課と言われる組織で、
大型の入札案件を獲得するために悪戦苦闘していく。
長引く不況で建設業界も景気が悪く、傾きかけている会社もチラホラって状況。
平太の会社もそこそこの大手だけど、経営は苦しい。
で、社運をかけてでかい仕事を獲りに行くんだけど、
その過程で談合に巻き込まれる。
そもそも談合は悪いことなのだけど、する側からしてみれば必要悪だって考え方もある。
目先の運転資金欲しさに、赤字で入札するような輩が出てくると、
業界全体が血を流しながら価格競争に走って潰しあう事態になってしまう。
大手ゼネコンが倒れると連鎖的に何百という下請けが潰れて大混乱が生じる。
それって健全じゃないでしょ、だから適正な利益を確保しながら回していく。
それが業界全体の健全性を守ってるんだって理屈。
連鎖倒産の話とかは、金融に似てるよね、大きすぎてつぶせない問題(too big to fail.)。
まぁ、言いたいことはわからんでもないが、これが当たり前になると、
企業努力もイノベーションも起きなくなってしまう。
健全な競争自体が排除されてしまうわけだ。
まぁ双方共に健全な競争を守るためっていう主張の根本は同じところが面白い。
言ってることは同じなのに結論は真逆。
きっとどちらにもそれなりに正しい部分はあって、
社会的にダメなことが会社的には必要だったり、っていう
その狭間で揺れる感じ、仕事の現場ってきれいごとだけじゃ回らない感じ、
そういう感覚を掬い取るのが池井戸潤の面白さなんだと思う。
ちなみに、以下はちょっと歪んだ楽しみ方であることは自覚しているのだけど、
平太の彼女の萌ちゃんがなかなか酷い。
平太は、洗練されてないけど人を疑ったりしない純朴で良いやつ。
なんか建設業界っぽい!
かたや銀行に就職した萌ちゃんは、平太よりは賢い感じ。
仕事も面白くなってきて、次第に平太に物足りなくなってしまう。
で、エリート銀行マンの先輩に口説かれ出してからがさぁ大変。
あれよあれよと籠絡されていくではないか。
平太も違和感は感じていて、なんか離れていきそうな萌ちゃんに突然プロポーズ。
いきなり指輪を渡しだす。でも、萌ちゃん受け取れないよって断っちゃう。
平太、良いやつだけど、面白すぎる。
指輪、高かったのになぁ。
ちょっとお洒落なワインバーでワイン飲むのが大人って感じ、
なんか彼(エリート銀行員)は新しい世界を教えてくれる、みたいなくだりがあって、
萌ちゃん、目を覚まして!と思わざるを得ない。
でも、そんな僕たちの目を覚ませ、という思いをあざ笑うかのように
平太には何も言わず、ちゃっかり抱かれる萌。
萌、恐ろしい子。
対する平太は居酒屋でいつも焼酎なんだよ。
平太、良いやつだなぁ。俺も焼酎好きだよ。
この焼酎ださい、ワイン洒落てる、みたいな紋切り型とか
それで揺れ動く萌ちゃんとか、そんな馬鹿な!?っていう
稚拙な揺らぎがなんだかとても楽しい。
結局最後の最後で、萌ちゃんもなんかこの銀行員違うわ、ってなるんだけど、
何も知らない平太が不憫でならない。
平太に真の幸せは訪れるのだろうか。
その後の平太と萌が気になって仕方ないから、続編希望なのだけど、
作家の関心はまったくそんな所にはないので、きっと出ないんだろうなぁ・・・。
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