近所の書店でものすごくオススメされてたから、
何も考えずに買ってみた。
いしわたり淳治という人も、よくわかってなかったのだけど・・・。
SUPERCARのギタリストだったんだね!
その後は作詞とプロデュースの方で随分活躍しているみたい。
- 作者: いしわたり淳治
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/01/08
- メディア: 文庫
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短編小説とエッセイとが混ざって1冊になっている感じなのだけど、
確かに文才あるんだなぁ、とは思った。
本人も言葉が好き、みたいなこと書いてたし。
逆にこれ以外出てないのが不思議っちゃ不思議。
短編はショートショートみたいな雰囲気なんだけど、
そういうものを書く人って、視点がとてもユニークだったりする。
例えば現代の社会を昔よりもさみしさを感じなくなってるっていう
捉え方をする視点とか面白かったな。
「やはり、さみしさがわれわれに結婚をさせたのですかな」
「ええ。そうかもしれません」
「かつて、子は国の宝と言われました。しかし、今の時代は、さみしさこそが国の宝である、と言えるのかもしれませんね」
「ははは。さみしい話ですな」
「ええ。さみしい話ですよ。はははは」
P.25
あと、本読んでて楽しいのは、本当かどうかわかんないけど本当っぽい面白い話。
アメリカの大地で暮らしていたネイティブアメリカンたちはコロンブスの巨大船が初めて岸にやってきたとき、それが見えなかったという説がある。
その巨大船は当時の彼らの想像や知識の範囲をはるかに超えていた。
その結果、彼らの目や脳には「そこにある」船がまったく「見えなかった」のだそうだ。
P.101
確かに知らないものは認識できない=見えない、ってのはありそうな話ではあるけどね。
だいたい何についても言えると思うが、基本的に熱く語るのはまずい。
人が「熱く語る」ときの内容なんて、ほとんどが嘘なんである。
雄弁に語る、それはイコール自分で自分を演出しているだけ、というケースが多い。
つまり、お笑いについて熱く語るというのは、笑いをわかっている自分、を演出したいわけだ。
P.130
この熱く語る=自分を演出してるだけ、っていうのも結構鋭いなぁ、と。
そっかー、演出かー、と。
でも確かにほとんどが嘘、ってのもなんかしっくりくる。
そして自分のことは自分が一番よくわかってないんじゃない?ってのも
平易な言葉で上手に書いてる。
そういえば、よく自分と性格が合うとか、自分と価値観が合うとかでみんな恋人を探すけど、そもそもそれってどうなんだろう? 自分のことなんて自分自身がいちばんよくわかってないんじゃないか?自分が知っている自分なんて、鏡に映った顔みたいなものだろう。
「左右が反転していて微妙に違う顔」のように、現実とは微妙に違う顔。
鏡の中の顔は、自分自身が見ているから少し意識してて、気取っていて、その分少し自分で表情を作っていて。
結局、自分はこうだと思い込みたい自分を演じている自分だ。
そんなのは本当の自分の顔じゃない。
そっちの自分を本当の自分だなんて思ってると、いつか必ず心に歪みが出て来るはず。
例えば、誰も本当のわたしをわかってくれない! というふうに。
P.183
下手な奴が書くと青臭さが出て顔をしかめそうな話だけど、
素直に上手だなぁ、と思ったのでした。
確かに自分にも色々いるし、演じ分けてる間にわからなくなるとかってありそうだよなぁ。
どれも嘘だし、どれも嘘じゃない、みたいな感覚。
- 作者: いしわたり淳治
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/01/08
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