いま、話題の書。
ピースの又吉が面白いって言ったとかで、
ネットのニュースになってみたり。
中村文則は若手の実力派で、色々書いてる。
気にはなってたけど、これが読むの初めてです。
- 作者: 中村文則
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2014/12/15
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (12件) を見る
いろんな人が出てくる群像劇で、
一番最初に出てくる主人公っぽい人、楢崎くん。
この人、相当存在感が薄く、彼の視点で語ると大体↓こんだけ。
まぁ、気になる女を追っかけてたら、
謎の教団Xに連れて行かれて、
そこで女とヤリまくりました。
気持ちよかった。
今は、アフリカで人道的なことしてます。
うむ、楢崎、薄っぺらいけど、
気持ちよくてよかったな。
もう二度とないと思うぞ。
というあらすじはさておき、
人の意識とか欲望とか、この国の右傾化とか、その辺がテーマ。
だから、これってものすごく今が旬というか、同時代性を強く感じる本。
今の政権で、世論が右傾化している今の日本で書かれたっていう
時代背景と不可分なんだけど、そういう時代の気分って
作品は残っても忘れられていっちゃうんだよな。
意識に関する話は個人的にもとても面白かった。
人体の不思議というか、脳の不思議というか。
そして多くの脳科学者は言います。
意識「私」を司る脳の特定の部位は存在しない。
脳の大局的な働きによって意識「私」が生まれる。
脳がなければ、意識「私」は発生しない。
脳の活動が、意識「私」に反映される。
でも、意識「私」によって、脳に何らかの因果作用を働きかけることはできない。
どういうことか? つまり意識「私」というものは、決して主体ではなく、脳の活動を反映する「鏡」のような存在である可能性があるのです。
「私」達が「閃いた!」と感じた時、その0.何秒か前に、実は脳が「閃いて」いるのです。
P.49
意識はどこで生まれているんだろう、私ってなに?っていう話。
実は意識は後づけでその前に脳が信号を発している。
右手を動かそうと意識する前にすでに右手を動かす信号は発せられてるっていう話。
で、そのあとつじつまを合わせるように、まるで自分の意思だったかのように、
意思や意識はあとから発生する。
そうなると全ては自分の意思とは異なるところで決められているのかもしれない、
なんて話も出てくる。
まぁ不思議はまだまだたくさんあるってことだね。
この辺のエピソードが物語にも影響を与えている。
誰の意思で動いているのか、自分の意思のつもりが、そうではなくて・・・みたいな。
あと、教団Xは乱交しまくりのセックス教団なので、所々、エロい。
「・・・・・・高原さんが私の身体を気に入らなくても、少なくとも、私の中に強く強く出している時の3秒だけなら・・・・・・。高原さん、私は」
P.74
女の口から語られる3秒の幸福。
これは、教団X読んだ人界隈だけに通じる隠語になると思われる。
まぁ、所々冗長な気はするけど、たっぷり書き込みたかった気持ちもわからんではない。
でも教祖のゲスさとか、語りすぎて理屈っぽいんだよね。
よっぽど3秒の幸福女の方が、一瞬で鮮烈な印象を残すよね。
人の欲望とかほとんど生理現象だからね、人間なんてみんなプリミティブに下衆なはずで、
それからすると、なんかまだ理屈っぽいっていうか、かっこつけてるというか、
キャラクターの造形がたまに説明的すぎるんだよな。
あと、『サラバ!』もそうだったけど、
同時代の話題作には、やはり同時代性を感じるな。www.book-select.com
まぁ、文学とは少なからずそういうものなのかもしれないね。
時代の空気を言葉で掬い取るような、そういう側面はあるんだと思う。
- 作者: 中村文則
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2014/12/15
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (12件) を見る