朔ユキ蔵、面白いかも。
『お慕い申し上げます』が結構面白かったから、
過去の作品に手を広げてみたのだけど、これまた面白い。
ハクバノ王子サマ コミック 全10巻完結セット (ビッグコミックス)
- 作者: 朔ユキ蔵
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/06/30
- メディア: コミック
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『お慕い申し上げます』は煩悩にまみれた坊主の苦悩を描く作品だった。
『ハクバノ王子サマ』は婚約者ありの20代男性と不倫経験ありの30代女性の物語。
女の視点から見れば、惹かれるんだけど他人の男。
男の視点から見れば、惹かれるんだけど職場の先輩かつ自分には婚約者あり。
というようにやっぱり制約がある。
しかも二人とも教師。
社会的にそれなりに立場があるというか、清廉潔白であるべきイメージのついた職業。
『お慕い申し上げます』が坊主だったように、社会によって形作られたある種の聖職と
当人たちの泥臭いまでの人間性の対比が素敵。
人間の欲望というものは本質的に愚かしさを孕んでいると思っていて、
わかっちゃいるけどやめられないってのが人間くさくて面白い。
まぁ、他人から見れば、馬鹿だなぁ、なのだけど、本人にとっては重大。
後悔や迷いを思いっきり抱えながら進むのだけど、そのじれったい迷いこそが
物語を盛り上げるスパイスだ。
30過ぎて女の旬を過ぎてしまったと友人に語らせたり、
結婚は9割の我慢と1割の喜びと既婚者に語らせてみたりとか、
その辺のリアリティも秀逸。
言ってることがリアルというのもあるかもしれんけど、
この場合はより、そういうこと言うやつ周りにいるわっていうリアリティを感じる。
不倫相手との別れの回想シーンも巧いんだよなぁ。
寂しさというのは非常に難しい。
寂しいのが嫌だから、不倫はやめるって話なのだけど、
そもそも寂しさを埋めるように始まっていたりするわけだから、
寂しさというのは始まる理由にも終わる理由にもなるんだな。
そして一人だろうが、一人じゃなかろうが、
それぞれが寂しさを抱えている。
家族持ちの寂しさってのもあるよなぁ、ほんと。
で、話は飛ぶけど現代は昔に比べると寂しさを感じなくなってきているから、
結婚しない若者が増えている、みたいな設定の短編があったのを思い出した。
寂しさと欲望について考えるには良い漫画だった。
他にもこの人の漫画全部読もうと思った今日この頃。
ハクバノ王子サマ コミック 全10巻完結セット (ビッグコミックス)
- 作者: 朔ユキ蔵
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/06/30
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