こうの史代は戦争を題材として扱いながらも、
全く説教くさくない作品が描ける稀有な作家。
これって結構立派なことだと思う。
戦争の悲惨さを描くとか、
なんかそういう大義名分みたいなものを掲げた表現て、
押し付けがましいし、どことなく陳腐になりがち。
24時間テレビ的な感動の押し売りとかいらんわけです。
こうの史代はそういう変な正義感とか大義名分、安っぽい感動から
距離をとって、淡々と日常を描く。
戦争が起きている日常。
それは戦争が起きていること以外は、ごく普通の日常。
というか、今の自分たちの日常の延長戦にもごく普通に戦争は存在できるんだな、と感じるくらい日常だ。
戦時中も、皆が狂信的に生きてたわけじゃない。
むしろ、市井の人は、必死に生活していただけなんだろうな。
それと、独特の趣がある画風も素敵。
真面目でとても良い作品だと思うから、落ち着いた時にしっかり読もうとして、
先送りになってしまっていたのだけど、こうの史代の作品にハズレなしだな。