台湾在住30年の著者が取材を重ねた上で小説に仕立てたフィクション。
ただ、個人名や組織を変えてはいるけれど、実際にこういうことが起きていたのだろうという点では、
ノンフィクションのルポを読んでいる感覚に近いものがある。
- 作者: 木下諄一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/03/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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そもそも自分自身、台湾に行ったことはなくて、
たくさんの義援金を送ってくれたことは聞いていたけど、
なんとなく親日な国という印象しか持っていなかった。
あの義援金は一体どういった感覚で集められたものなのか。
なぜ、200億円も集まるのか?
本作の中で出てくる数字としては中国が3億円ちょっと。
寄付とは金額の多寡ではないとは言え、台湾の寄付金の額が桁違いであることはわかる。
本作では、その寄付をしよう、募金をしようとした台湾の人たちが
どういった思いで行動したのか、その様子がいくつかのケースを通じて描かれている。
元を辿っていくと、統治時代を経験した高齢者層の中に日本への感謝の気持ちが
残っているということなんだろうけど、
世代を超えて、その感覚がじわりと、伝わっている印象。
それ以外にも寄付をすることで感謝の気持ちを知る、といった考え方なども
非常に儒教道徳的な清い教育精神を感じる。
今、こういうことを公教育で教える感覚ないよなぁ、としみじみ感じてしまった。
圧倒的に多額の義援金をもらいながら、日中関係への配慮もあって、
日本政府からのお礼の新聞広告が台湾には出なかったということもこの本で初めて知ったし、
それならばと有志で寄付を募り、台湾の新聞にお礼広告を載せるというプロジェクトがあったことも知らなかった。
知らなかったことだらけだったけれど、
一端を垣間見ることができたので本当に読んでよかったなぁ。
そしてなんだかものすごく台湾に親近感を感じたし、
今度家族を連れて行ってみたいな、と思ったのでした。
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- 出版社/メーカー: 講談社
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