統合失調症を発症した著者が、
自分の体験を文章にした稀有な記録。
大抵の患者は、文章もうまく書けなくなってしまうそうなのだが、
小林さんの場合は、統合失調症を発症しても文章能力が失われることはなかったので
この非常に貴重なドキュメントが残された、というわけ。

ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)
- 作者: 小林和彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/10/28
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 205回
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この記録が物凄いのは、発症前のところから、正に発症する当日のこと、
それ以降の症状などが克明に記録されていること。
これを読むと、狂気と日常は地続きであることがよくわかる。
タイトルにある通り、彼にとっては「世界がこう見えていた」だけなのだ。
そう見えてしまっているのだからどうしようもないではないか。
もしこれが自分だったら、自分が見ている、認識している世界を
信じるなという方が難しいように思う。
統合失調症という病に限らず、人は自分の認識している世界に生きている。
それはあくまでも自分が作り出している仮想現実に過ぎなくて、
時折自分の世界を客観視して見たり、他人の世界とのズレや齟齬を認識してみたり、
そういうことを繰り返しながら生きているのだと思うのだけど、
うつ傾向の人とかの話を聞いていると、「自分の世界」が強すぎるなぁと感じることが多い。
で、人の認識を変えるって至難の技。
やばいなと思っても、なかなか人の世界を変えることってできない。
小林さんの世界は、荒唐無稽な妄想も多くて、正直読んでて疲れる部分もあるのだけど、
それが統合失調症を発症した人の世界なのだ、と思うとすげえな、と感じる。
世界がこう見えてしまったら、ここから逃れられる人っているんだろうか。
異常な世界を見てしまう状況を治療することって可能なんだろうか??
精神科って、内科的なイメージが強いけど、見え方を変えない限り治らないんだとしたら、
それって外科的なアプローチじゃないと治らないんじゃないか、とか
なんかそんなことも感じたり。
もちろん、外科的なアプローチで人の認識をいじるって
できたとしたらそれはそれで恐ろしいことだけど。

ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)
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