Kindleで安かった。きっかけはただそれだけなのだけど、
安いとそういう消費行動を誘発するんだという一つの証左でもある。
まぁ、そんなことは置いといて、
『内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎』である。
漢字だらけのタイトル。覚えてもらうことを拒絶しながら
とりあえず印象としては残ることに賭けたようなようなタイトル名ですね。
内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎 全17巻完結 [マーケットプレイスセット]
- 作者: 渡辺保裕
- 出版社/メーカー: 新潮社
- メディア: コミック
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で、タイトルをよく読めばわかる通り、
権力犯罪を強制的に、取り締まる人の物語なわけです。
つまり権力者の裏の顔を暴き、
権力を握って牛耳っている巨悪を取り締まる痛快な物語、という仕立て。
小泉純一郎みたいな人とか、安倍晋三みたいな人とかが出てきたりして、
そいつらの悪事を暴いていくのだけど、ノリは昭和の劇画。
小池一夫とか池上遼一の香りを感じる。嫌いじゃないよ、そういうの。
で、政治を題材にしたこの手のジャンルでは『サンクチュアリ』が絶品な訳よ。
こういうのは、とことんバカバカしく荒唐無稽な感じにやってくれると楽しいんだけど、
原作の北芝健は漫画家でもなんでもなくて、元警官の人だからな。
起こり得そうな事件という意味でのリアリティとか、政官財のパワーバランスとかのそれっぽさは出せても
お話自体のマンガっぽさは他の人が補ってやらないといけない。
もちろんそうしてたんだと思うけど、そこら辺、弱いよね。
そこらへんが所詮コミックバンチの限界って感じがしてしまう。
現実と所々リンクしながらリアリティのあるフィクションとしてやっていくなら、
もっと原作者を活かして現代日本を舞台とした『ゴルゴ13』みたいな
路線を確立することもできたと思うんだよね。
この漫画はジャンプ系漫画が強さのインフレを起こしていくように、
財前丈太郎が戦う相手がどんどん大物になっていくという構図になってしまっている。
本来そういうジャンプ系バトルものみたいな構図にハマる必要のない物語のはずなんだけどね。
物語の中でこういうインフレを起こしていくと途中まではお話も盛り上がってはいくんだけど、
一定の閾値を越えてしまうとドンドンしらけていって終わり、ということになってしまう。
『ゴルゴ13』は何かと戦うことがメインのお話じゃなくて、世界情勢とかなんでもネタにして、
そこに陰謀論的な物語を絡ませて、結果的に戦いは生じるんだけどゴルゴは全てを超越して強い、という
物語の型の中でひたすら量産している。その量産を支えるネタの取材力が驚異的なんだけど。
きっと丈太郎も、メインを巨悪との戦いの物語ではなくて、
権力者たちの犯罪の物語にすればもっと面白く、長持ちするものになったんじゃないかしら。
実在する事件とかを元にした権力犯罪や陰謀があって、それを全てを超越する財前丈太郎が解決する。
この『ゴルゴ13』的な型に乗っ取って連載するべき漫画だったんだよ、これは。
『ゴルゴ13』的な型って言ってるけど、これはある種『水戸黄門』的な型とも言えるな。
悪い権力者が懲らしめられる物語だから、基本的に日本人が好きな種類の話なのよね。
まぁ、そんなことはさておき、作中に後藤田正晴をモチーフにしたキャラクターが出てくるのだが、
なんだか本人のことが妙に気になってきた。
- 作者: 後藤田正晴,御厨貴
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昔、買ったままになってた『情と理』を今こそ読むときがきた!って感じ。
こういう読書することによるセレンディピティみたいなのがすごく好き。
どんなにくだらない物語でもそこにはいろんなきっかけに満ちているのよね。
だから読書はやめられない。
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