エッセイが好きだ。
毒にも薬にもならないゆるいテンションで書かれたエッセイを読むという行為には、
読書の快楽が詰まっている。
で、ひょんなことからこの本を手にとった。
- 作者: 朝井リョウ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2017/06/30
- メディア: Kindle版
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前作のエッセイが好評だったから出たと思われる第2弾。
自分は、一作目の『時をかけるゆとり』は読んでないけれど、
今時、エッセイの第2弾が出るということはそれなりに面白いんだろうと当たりはつく。
- 作者: 朝井リョウ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/01/30
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そもそも朝井リョウの小説を読んでるのか、という問題があるのだが、
正直に告白すると読んでない。
『桐島、部活やめるってよ』が売れた時は、
御多分に洩れず「◯◯、△△やめるってよ」ってネタにしてた。
でも読んでない、ごめん。
そんな私が読んでも文句なく楽しかったのがこのエッセイだ!
エッセイって、結局作家の身の回りのなんてことない日常の話だったりするのだけど、
だからこそ、何を切り取るのかというところでセンスが現れるし、
日常を、世界を見る視点が露わになる。
エッセイの楽しみはこの他者の視点を知ること、
それも作家という変態が世の中を見つめる目を知ることだと思っていて、
共感できることもあれば、全く意味わからないこともある。
でもこの全く意味わからないことこそ自分にはない世の中の見方であり、
自分にはない価値観そのものなので、それがまた新鮮で楽しいんだなぁ。
作家の目を通じて世界を改めて見る、という新鮮さと、
自分にはできない体験を作家の目を通じて知ることができる。
例えば本作では肛門記と名付けられた書き下ろしがあり、
そこで赤裸々に痔、および痔が悪化した痔瘻と手術して回復するまでの話が語られるのだけど、
最初は痔というどこかファニーな持病を自らおちょくりつつ、次第に笑ってられない状況に直面していく姿は、
読んでる読者にとっては(申し訳ないけど)面白さ以外の何もない。
そもそも人が笑ってられない状況に直面していくことほど滑稽なものはない。
ここには笑いの真理が詰まってる。
なんの脈絡もなく突然思い出したけどデトロイト・メタルシティが面白いのも、
主人公が笑ってられない状況に追い込まれるからこそなんだよな。
結局人が困っている姿って滑稽なんだよね。人間て意地悪ね。
まぁ古今東西、色んなエッセイがあるけれど、総じてエッセイは面白い。
朝井リョウは現代っぽいというか、なんかそれなりにウケるエッセイを自覚的に書いてる気がするから、
エッセイ初心者も楽しみやすい気がする。
面白いんだけど、ちょっとネタっぽすぎるきらいはなきにしもあらずなのだけど、
まぁその辺は今後円熟していってくれるのでは、と期待。
というわけで、順番逆だけど、前作のエッセイも読んでみようかな。
- 作者: 朝井リョウ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2017/06/30
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