孫子の兵法の原形を書いたのは孫武。
そして孫武の子孫でその理論を実践、進化させていったのが孫臏。
で、孫子と言うとこの二人のことを指すのだけど、
この物語は後者の孫子、すなわち孫臏が主人公。
時代は紀元前4世紀頃、中国の戦国時代と言われれるタイミング。
そもそも春秋戦国時代というのはものすごく面白い時代。
中国が統一される前、六国がしのぎを削り、各国の英傑たちの伝説的な活躍は物語性もあって面白い。
故事、成句の元になったエピソードも多い。
中国史ものといえば三国志が圧倒的なメジャー感だけれども、
どちらかといえば春秋戦国時代の方がなんか好き。
とにかく雑多なんだよね。
三国志よりももっと雑多で色々なキャラクターが出てくるイメージで、
三国志と水滸伝足した感じがするんだよね、この辺の時代って。
まぁ、そんな春秋戦国時代の孫臏が主人公な訳だからそりゃそれなりに面白い。
でも、作者自身の意図によるものなのだけど、この作品で描かれているのは、
孫臏の活躍の中のごく一部の時期のごく一部の戦いのみ。
作者の中には長大な構想があり、ここで描かれているのはその1章分に過ぎないらしい。
そう言われれば確かに1章分程度の内容なので納得なのだけど、
言ってしまえばその程度の話にこれだけの巻数費やしてるから、ちょっと話がくどいんだよね。
そしてこういう軍略知略ものって、力ではなく知恵を持って相手を圧倒する話で、
それこそが読んでいて気持ちの良い話。
そういう意味では、『LIAR GAME』とか『嘘喰い』と言った知略ものと系統は一緒のはずなんだよ。
それなのに、あぁそれなのに、
なんか後半になるに従ってどちらかというとバトル描写がメインになっていっちゃうんだよね。
違うだろ、と。
この作品に必要なのは力の描写ではなく知力の描写なのよ。
ペンは剣よりも強し、みたいな圧倒的な暴力に対する知恵の勝利みたいな物語であるべきで、
もちろん、そういう要素もあるんだけど、その知恵の描き方すら大味になっていっちゃったってのが正直な感想。
作者自身はまだまだ描きたいこといっぱいあるみたいだし、必ず書くと意気込んでいるから、
今後まだ見ぬ物語を書いてくれることに期待はしてる。
しかしまぁ、漫画誌も厳しい状況だから描ける場所を探しながらってことになるんだろうけど、
コミックスに書いてある決意表明くらい本気で描きたいなら、
さっさと書いて自分でKindleで売ればいいだけだと思うんだよね、このご時世。
それほどまでに描きたいものがあるならば、連載させてくれる場所がないってのは
作家にとってそこまで制約じゃなくなって来ていると思うんだが、
結局連載の原稿料を元手にアシスタント回してかないと描けない、とか
なんだかんだ編集いないと描けない、とか
本当に一人になると途端にできない、みたいなことがあるんだろうなぁ、と。
ま、そんなこともさておき、孫子が描かれている小説が読みたくなってきたのだけど、
これが意外と少ないみたいね。
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小説孫子の兵法 (下) (Kosaido blue books)
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とりあえず買ってみようかな。
いずれにせよ、続編に期待!