魅力的な表紙とタイトル。
ジブリの少女やディズニーのプリンセスは何と戦い、どう働いたのか、と言う帯も興味を引く。
もう少し軽めの本かと思ったけど、コンテンツを題材にしたフェミニズムの話で、
思っていたよりもしっかり、カッチリした本でした。
- 作者: 河野真太郎
- 出版社/メーカー: 堀之内出版
- 発売日: 2017/07/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『アナと雪の女王』の革命
プリンセス・ストーリーはディズニーが自ら作り上げた、物語の文法であり、
女性にとっての憧れであるとともに、ある種の呪いも含んでいる。
いつか私の王子様が現われて、まるで魔法のように自分の生活は一変する。
異性によってもたらされる幸せといった暗黙の前提は、
男女平等の概念とは程遠い、男と女の性別期待役割を下地にしないと成立しない。
シンデレラ・コンプレックスと言われるやつで、
女性が「外から来る何かが自分の人生を変えてくれるのを待ち続けている」ことへの批判と言うものが存在する。
でも時代の変化にディズニー自身が一番敏感に対応してきたとも言える。
シンデレラ・ストーリーを否定するものもまたディズニーなのだ。
『シンデレラ』ストーリーの否定は『リトル・マーメイド』や『美女と野獣』あたりからすでに始まっていて、
一九九八年の『ムーラン』において決定的な転回点を迎える。
(中略)
『ラプンツェル』では擬似的な母からの解放が、『メリダ』では母のリベラルな解放と母親の和解が描かれる。『アナ雪』は、二〇年近いディズニー映画の探求の完成形である。
P.21
アナ雪は、まるでシンデレラストーリーであるかのように始まる。
ハンスと恋に落ち、自分の世界が変わる、と夢見るアナ。
エルサの魔法で凍結しそうになった彼女はハンスのキスで元通りに、と言うオールドスタイルで
いくのかと思いきや、ここでハンスの正体が暴かれる。
ハンスは王子ではあるが、アナを利用して国を手に入れたいだけの下衆だったわけだ。
これはもう徹底的なシンデレラ・ストーリーの否定。
じゃあ、クリストフという本当の王子様に鞍替えして幸せになりましたとさ、って話かというとそうじゃない。
クリストフは最後まで添え物に過ぎず、アナは命をかけてエルサを救う。
あくまでもアナとエルサの姉妹の物語なんだな。
そう考えるとこれがシンデレラに代表されるプリンセス・ストーリーとは
いかに異なるなものかよく分かるし、革命的だと言われるのも納得。
シェリル・サンドバーグは女性のヒーローなのか
シェリル・サンドバーグ、FacebookのCOOとして働く女性として輝かし経歴を持つお方。
著書の『LEAN IN』も話題になってた。
LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲 (日経ビジネス人文庫)
- 作者: シェリル・サンドバーグ,川本裕子,村井章子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2018/10/02
- メディア: 文庫
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女性もリーダーを目指すべき、と説き働く女性からの支持を集めたサンドバーグに対して、
ドーン・フォスターは『LEAN OUT』という著作で批判してる。
サンドバーグは男女の格差を是正していない。
サンドバーグがもたらしたのは女性の中での階級格差だ、と。
サンドバーグが代表するようなフェミニズムをコーポレート・フェミニズム(企業フェミニズム)と呼んでるのだけど、
サンドバーグという成功例は企業にとってとても都合が良い存在なのだ、と。
努力すればトップにまで上り詰められる社会を象徴する存在として扱えば扱うほどに、
社会に隠然と存在している男女の格差はあたかもないものとされ、
女性が社会的に成功していないとしたらそれはすべからく本人の努力や才能の不足によるものと帰結される。
だって、シェリル・サンドバーグは上り詰めたじゃない!?あなたも頑張ればなれるわよ、ってわけ。
確かにこれはよくできた落とし穴だよな、と思う。
クリエイティヴ経済とやりがい搾取
これは読むとハッとするんだよなぁ。。
われわれ自身のなかに内在するクリエイティビティの実現こそが「富」を産むのである。それは、自己実現こそが富になるというユートピア願望の表明である。
P.96
まず著者は三浦玲一の指摘を引用し、こう続ける。
ここで三浦が、アイデンティティの労働というビジョンが、あくまで旧来の方の労働の隠蔽なのであり、クリエイティヴ経済というのは(ポストモダンな偽)概念であると述べていることに注目しよう。それらは、客観的な真実ではなくイデオロギーであり、苦行としての労働を隠蔽するものなのである。
一言で言えば、これはやりがい搾取の構造である。労働は自己実現として捉えられるべきであり、苦行としての労働を表面上伴うように見えるとしても、それはあくまで付随的なものだ。
P.97
上記のような価値観のもと、そう思える労働者と、派遣労働を渡り歩くしかない労働者との間の分断が隠蔽されていくのだ、と語る。
なるほどねー、と思ってしまった。
自分は仕事楽しいし、苦行としての労働というイメージを持って働いていないからね。
全てを手に入れた女とエヴァンゲリオン
科学者、母、女、3つの人格を移植したのがMAGIシステムなのだけど、
これは働く女性の3つの顔を象徴している。
しかし現実は全てを手に入れられる人というのは稀有な存在で、
いたとしてもレアキャラな訳だ。
ただエヴァにはこの全てを手に入れた女が存在するという指摘が面白い。
それがシンジの母である碇ユイなのだけど、それは彼女が死んでいて、
すでに神話的な地位に収まっているからこそ成立することなのだ、と。
なるほどね〜。
- 作者: 河野真太郎
- 出版社/メーカー: 堀之内出版
- 発売日: 2017/07/20
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