読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Book Select 本を選び、本に選ばれる

読んだ本にまつわる話を書き綴っていくことにしました

あとがきから虚構と現実の楽しみ方を思う。 手塚治虫/平原太平記

『平原太平記』は手塚治虫、初の長編時代もの。
領地内の未開の平原を開拓する話なのだけど、
妨害や戦、天変地異など様々な苦難がのしかかる。

古い作品なのだけど、比較的普通に読めた。
ただ単に自分が古い漫画自体に慣れてきただけかもしれないが。

もう1つ収録されている『月世界紳士』はかぐや姫の翻案ものですこぶるつまらない。

平原太平記

平原太平記

平原太平記 (手塚治虫漫画全集)

平原太平記 (手塚治虫漫画全集)

ただ、手塚治虫漫画全集が素晴らしいのは、
作品がつまらなくても、手塚治虫自らのあとがきが面白いのだ。

『月世界紳士』が書かれた当時は、
月の裏側は観測されたことがなく、未知の世界だった。
なので月の裏側には大気があって、ウサギに似た人間が住んでいる、なんていう
設定のSFを描いたわけだ。

ところが、後年ソ連が月の裏側を撮影し、表側とほぼ同じと分かった途端、
この作品内での描写に対して、デタラメだと抗議が来たんだそうだ。

それに対して、
「夢やロマンが少しずつ失われていくのを、ちょっぴり悲しくも思ったものでした。」
と、述懐している。

いつの世もそうだけど、虚構を虚構として楽しめない大人は多い。
虚構は虚構だからこそ出せるリアリティのために虚構で良いのだ。
嘘をつくとかとは違う話。

だいたい現実もまた夢のようなものだよ。現世は夢。
まぁ手塚治虫が嘆く「夢やロマン」は、数十年の時が経っても意外と残っている気がする。
みんながみんな馬鹿じゃないし、むしろフィクションは世間を席巻しているくらい。
もちろん表現規制だの、面倒なことは増えているし、
何かと抗議してくる馬鹿もいるのは確かなのだけど、
「夢やロマン」は今なおそういうノイジーマイノリティに駆逐されずにちゃんと残ってる。

そんなようなことを思ったので、
たとえ面白くない作品でも、読めば読んだなりに、
何かを思うきっかけにはなるということだな。

平原太平記

平原太平記

平原太平記 (手塚治虫漫画全集)

平原太平記 (手塚治虫漫画全集)