正直、手塚治虫漫画全集をかたっぱしから読み始めたときに、後悔した。
初期作品が続くと、正直つまらんものが多いからだ。
でも、ここに来てやっと普通に楽しめる作品が登場。
それが『きりひと讃歌』だ。
- 作者: 手塚治虫
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『きりひと讃歌』は顔が獣のように変化して死に至る奇病をめぐる医療ドラマ。
『白い巨塔』ばりの医者の権力争い、奇病をめぐる謎、
人体実験、地方の村特有の因習、しきたり、
フリークス的な要素など、これまたてんこ盛り。
- 作者: 山崎豊子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/01/10
- メディア: 文庫
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で、当時の劇画の流行もあって、結構固いタッチで描かれている。
まぁ今まで古い作品を散々つまらないと言ってきたけれど、
この人のありとあらゆる題材に取り組んでる感じはすごい。
博覧強記とはまさにこのこと。
ただ、現代の我々の目から見ると、その様々な要素を作品に盛り込みすぎるきらいがある。
もっともっとシンプルに1つのテーマを深く追えると傑作になるんだろうな。
そしてそれがうまくいくと『ブラックジャック』とか『火の鳥』みたいな不朽の名作になっていくのだろう。
で、とにかくこれまでの感じと違うのですよ、この作品は。
もう人間の醜い部分とか、頭のおかしいところを描写しているのが、
妙に迫力があって目が離せない。
例えばこういうの。
主人公の親友であり、ライバルでもある医師が、
主人公の恋人を襲ってしまう。
左のページ、レイプシーンなんだけど、なんか変。
なんか変なのがまた面白い。
ちなみに、一応謝ってます。すまん。て。
それだけかい!
で、この最低超人、最終的には頭おかしくなってしまいます。
迫力の気狂いシーンがこちら。
出ました劇画調!
もうこの時代の作品になるとコマ割りも大胆だし、
今でも普通に楽しめるようになってくる。
やっぱ漫画の神様だわー、と思い直した今日この頃でした。
でも世間では漫画の神様=アトムとかブラックジャック、火の鳥、みたいな
割とクリーンで善良なイメージしか無いからな。
実際はそんな無菌室みたいなつまらん人ではなくて、
この作品のようにもう少し人の闇を描いたような作品も多いんだよな。
で、そういう面白い作品に出会いたくて、
ぽつぽつ全集を読み進めているのでした。(つまらん作品多いけど)
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