震災がテーマの桐野夏生最新作。
桐野夏生はなんかダークでドロドロしたもの描くイメージ。
妻は何作か読んでるみたいだけど、自分は初桐野。
バラカという少女と周囲の人間の群像劇なんだけど、
若干拍子抜け。
いや、確かにどういう話になるのかなーって思って一気読みはしたんだけどね。
一気読みはしたんだけど、これで終わりか、というのが正直なところ。
物語として面白いかって言われたら特に面白くないよ、これ。
確かに川島という男の悪魔的なおぞましさとかはキャラ立ってるけど、
結局全てが作者の都合の中で組み合わさっていく感じが出すぎていて、
群像劇としての人の絡み方が読んでて冷める。
情報統制され、誰も信じられない監視社会。
味方が次々と消されていく陰謀論めいた世界も
それが丸ごと荒唐無稽なフィクションではない、ということを
言いたいのだろうけど、物語の色んなところにやっぱり作者の神の手が
透けて見えてしまうからイマイチ乗れないんだよね。
もう少し自然に読めたら、全然違う読後感だったと思うのだけど。
上手い人はその辺、あぁ、そこでこいつと繋がるのか!
みたいなのがもっと自然で、読んでてハッとさせられるけど、
その辺はあざとさと紙一重だからまぁ難しいよね・・・。
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/02/26
- メディア: 単行本
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ただ、本筋とはちょっと違う、沙羅と優子の妙な対抗心とか、
40代働く女性の焦りとか、諦念とか、その辺の様子の方が面白かった。
そしてなんとなく男に身を任せてしまったり、養子もらって子育てしたくなったりする軽薄さを
笑うことは簡単だけど、実際そういう状況に置かれたら
みんな寂しくて、不安で、崩れていくんだろうな。
ま、全部自分のせいなんだけどね。
その、ま、自分のせいなんだけどねっていう突き放した視点も持ちながら
その様子を抉るように描き出すところはなかなかのもの。
そしてこれ読んだリア充女性は、かすかに安堵するのかな。
まさにそういう境遇になりそうな女性たちはこれを読んでどう思うのだろう??
言われてしまったーって感じで自虐的な共感として楽しめるものなのかね?
あと、子供と父親の描写とかも妙にリアル。
「もうじきママに会えるよ」
ママと聞いて、娘が頭を巡らせて必死に母親の姿を捜している。この世に生まれてたった半年で、母親を唯一無二の存在だと認識するのだから、赤ん坊とはたいしたものだ、とパウロは思う。子供を持ってみると、自分もこうして育ってきたのか、と自分を肯定する気持ちが強まる一方、母親という巨大な存在に圧倒されるのが不快でもある。
P.56
そう、最初の1年半くらいの母親の絶対的な存在感にはウザさもある。
そして自分は女性ではないのでよく分からないんだけど、以下のくだりは女性にとってリアルなのかな?
男女関係なく、そういう心理はある気もするけど。
今、会っているのも、川島が離婚して職を変えたと聞いたからだ。女は、相手が不幸なら、いくらでも会える。
P.94
川島はこの女にとって昔の彼氏。
相手が不幸なら、会えるっていうのは裏を返すと自分が幸せなら、会えるってことでもあるような。
「女は、」がどの程度リアルなのかが気になるなー。
そういう40代女界隈の描写が面白く、むしろ震災とかのテーマはどうでも良い感じでした。
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