現代詩入門といっても、吉増剛造のような前衛的な現代詩というわけではなく、
ごくごくスタンダードな、現代の詩の入門編だ。
現代の詩ってなんぞってのは、あまり昔の古典を引っ張り出してきて
解説するのが趣旨じゃないよという程度のもの。
シェイクスピアやダンテ、リルケといった古典にもたまに触れるけど、
著者自身の創作のことや、選評をしたときの話など、
どのように読み、どのように書いてきたかというエピソードが語られる。

- 作者: 吉野弘
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2014/02/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
詩を読むなんて人は、もはや絶滅危惧種なんだと思うのだけど、
詩人が選ぶ言葉には想像を超えるものがある。
小説なんか読んでいてハッとするフレーズとかあるでしょう。
思わず覚えちゃうような。線引いちゃうような名フレーズ。
詩って極限まで言葉を磨き上げて、そのハッとするフレーズみたいなものを
毎回作っているようなもんだと思ってたりする。
村上春樹とか読んで付箋びらびらさせてる人とかは詩も読んでみたら面白いと思うんだけどな。
ハッとするフレーズって今まで気づかなかった物の見方、世界の見方に気づかせてくれたり、
自分では認識してても言葉にできていなかった感覚を言語化してくれるような物だと
思うんだけど、そういう言葉の力をまざまざと感じられるのが詩。
良いなと思う詩を読むとものすごく限られた言葉で情景が目の前に浮かんだりする。
情景が浮かぶというのは、なんとなく平凡な言い方だけれど、
本当に言葉からその世界が立ち現れる瞬間みたいなのがあるんだよね。
そしてそこから、情景だけでなく、叙情のようなものが流れ込んでくる。
もちろん大部分の作品はスルーなんだけど、そういう1編に出会えれば儲けものくらいの感覚で読んでた。
最近は全く読まなくなってしまったけれど、
改めて詩人が書く入門書ってどんなもんなんだろうと思って手に取った次第。
言葉に一つの意味しか感じられないとき、何事も生じません。矛盾した意味、異なった意味が加わったとき、ことばはそそけだち、異質な要素との間にスパークを発します。この「矛盾の共在」の発するスパークを「ポエジイ」と呼びます。
P.228 - P.229
人の作品を改作して比較解説している所などは、
あぁ、言葉の選び方一つでこんなに変わるんだなというのがよくわかる。
作家が選び取った言葉には意味がある。
そして詩人はこんなにも大切に言葉を扱うのだな、ということを改めて知った。
言葉を大切にするというのは日常の中でなかなかできていないなぁと反省しつつ、
せめて言葉と戯れる読書の愉楽は大切にし続けていきたい。

- 作者: 吉野弘
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2014/02/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る