カンボジア、ポル・ポトの隠し子、SF、という一見すると不思議な取り合わせなのだけど、
読み始めるとすぐに引き込まれる。
真実がわかる少女ソリヤ、天才少年ムイタック、
Boy meets Girlで物語は動き出す。
- 作者: 小川哲
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/08/24
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- 作者: 小川哲,mieze
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圧政の中で生きる過酷な現実は悪い夢を見ているようだが、
リアルな描写の中に、突然非現実的なキャラクターが登場する。
自分にはそれが魔術的リアリズムのような印象で
読みながらガルシア・マルケスの『百年の孤独』を思い出した。
百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)
- 作者: ガブリエルガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arquez,鼓直
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12/01
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その現実と非現実の間を縫うように進む感覚はリアルな夢を読んでいる感覚。
脳波を使って操作するゲームの開発と、
そのゲーム内に記憶を埋め込むというアイデアが近未来SF的な要素なのかな。
SFはあまり読んだことないのでなんとも言えないけれど。
やることが多すぎると、何もできなくなる。選択肢が多すぎると考えることが億劫になる。一度その地獄に陥ると、そこから抜け出すことは容易ではない。
下巻 P.43
人から創造性を奪うには忙しくすれば良い。
何から手をつけて良いのかわからない、優先度をつけることができないくらいの状態。
これは本当に巧妙にできた罠で、一度ハマると抜け出すことは難しい。
ラットのように懸命に滑車をこいで、1ミリも前に進ままない。
往々にしてそういうことはある。
二人の息子が一台のゲームを取り合い争っているとします。大人は「順番に遊ばないとゲームを没収する」というルールを制定します。それでようやく、二人ともゲームを遊ぶことができるのです。ルールがなければ、二人は延々とゲームの奪い合いをしているだけです。二人ともゲームができず、幸せになりません。
下巻 P.46
このエピソードも実に象徴的だ。
私たちが暮らしている社会もあらゆるルールの中で成立している。
ルールに囲まれて生きているわけだ。
ってことは家庭でも、職場でも、様々なゲームをプレイしながら生きている。
自分がプレイしているゲームやそのルールに対して自覚的でいられるかは、
仕事をしていく上でもとても重要な認知だと思う。
どんなルールのゲームで、どうすれば勝ちなのか、
あるいはどうすれば負けずにすむのか、
ここに無自覚だとまぁ、勝てない。
ルールや構造を学ばないと、一生抜け出せない。
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