Book Select 本を選び、本に選ばれる

読んだ本にまつわる話を書き綴っていくことにしました。マンガが大半を占めていますが小説も好き。マンガはコミックで読む派。本は買って読む派なので常にお金と収納が足りません。例年1000冊以上コミック読んでます。ちなみに当ブログのアフィリエイト収入は昔は1000円くらいいった時もあったけど、今では月200円くらいです(笑)みんなあんまりマンガは買わないんだなぁ。。収入があった場合はすべて本の購入に充てられます。

ずっと読まないできたけど以外と面白いじゃないか! J.K.ローリング/ハリー・ポッターと賢者の石、秘密の部屋、アズカバンの囚人

ずっと読まずにいたのだけど、USJ行くから読んでみた。

両親を悪の魔法使いに殺され一人生き延びた赤子がハリー・ポッター
魔法界でも、なんかちょっと特別な存在なんだけど、
普段は人間の親戚の家で暮らしていて、ゴミみたいな扱いを受けている。


人間界での生活は閉塞感の塊で、魔法界では自分は有名人だし、友達もたくさん。

現実世界をつまらなくて逃げ出したい場所として描くことで、ハリーへの共感や
そこから抜け出して魔法界で冒険することのワクワクが際立つわけで、
あぁ、とても上手な構造の物語だなぁ、と思ったのでした。

賢者の石での悪者も、正体は最後の最後までハリー自身も勘違いしてる。
それくらいわかりやすい悪役を配置しておいて、真犯人は違うというどんでん返しとかも
あらゆる構成が練りこまれていて巧みだな、という印象。

正直もうちょっと子供騙しなシンプルなお話なのかと思ってたのよね。。
読まず嫌いはよろしくないですね。

好きか嫌いかでいうと、現実世界がつまらないものとして描かれるのは好きじゃない。
でも子供と一緒に映画見たり、本読んだりする、共通のネタとしてはとてもいいよね。
大人が読んでも楽しめるくらいの作品だから。

今のところアズカバンの囚人が一番好き。
ひどすぎる冤罪事件だけど、
ハリーにももしかすると穏やかな日常が訪れるかもしれない、
そういう希望が見えたところが良かったよね。

こういうわかりやすい魔法使いものもいいけど、
子供達にいつか読ませたい魔法の話といえば、『ゲド戦記』だな。
派手に戦ったりしないとことん地味な魔法使いの物語。

影との戦い ゲド戦記 (岩波少年文庫)

影との戦い ゲド戦記 (岩波少年文庫)

宮崎吾朗の映画作品はゴミクソだったけど、原作は珠玉の名作なので
早く娘が読めるようになるといいなぁ。


不幸をリセットするために夢が叶う玉を集める、不幸な人達の争い。 小野洋一郎/新説 ブレイブ・ストーリー

宮部みゆきの原作をコミカライズ、なんだけど新説とついているのは原作とはちょっと違うから。

原作読んだことないのでなんとも言えないんだけどね、
宮部みゆきが描くファンタジーってどんな感じなのかしら、と思ってて
お手軽そうなこちらを読んでみた。


見た感じ、思ったよりもファタンジーなのよね。

ただ、同期がひねくれてるのよ。それが面白いんだけど。

不幸な運命を背負った人たちが、
その現実の不幸をなかったことにしようと、
リセットしようとして、5つ集めると自分の夢が叶うという宝玉を集めるって設定ね。

主人公は平和な家庭が、突然お父さんこの人と暮らすとか言って昔の女連れてきて、さよなら。
ヒロインは借金に首が回らなくなって父親首吊り。
ライバル的な友人は一家の無理心中で自分だけ生き残る。

いやー、不幸です。

ただ、一番悲惨なのはどう考えてもライバルの友人だよね。
別にお父さん不倫、ていうか昔の女と暮らしたくなっちゃったくらい、
自分以外の家族が無理心中で死んでしまったことに比べればいいじゃないの、と思ってしまう。

ただ、不幸は常に自分にとっての不幸なのよね。
出ていったお父さんにとってはそれが幸せかもしれないけれど、
主人公にとっては不幸なのだろう。
幸せかどうかは主観だからね。
みんな主観で不幸になってる。

で、その主観的不幸を無かったことにしようと、みんな私利私欲で動いてるってのが、
ちょっとした苦味になっていて、物語の深みを増している気がするよね。

そもそもやり直したからと言ってうまくいくもんなのかな。
あの時もっとこうしていればって思う気持ちはわからないでもないが、
大抵、うまくいかないものはうまくいかない構造が出来上がっているから、
よほど頑張ってその仕組みを変えない限り、遅かれ早かれ破綻すると思うのよね。
ま、物語とは関係ないけど、そんなことを思ったりもした。

原作読んでないからなんとも言えないんだけど、
やっぱりマンガはマンガというか、マンガとしての面白さに
縛られてしまうってことを漠然と感じたのよね。

もともとこの作品においてバトルシーンはどうでもいいと思うんだけど、
マンガとしてはバトルシーンは見せ場にしないといけない、みたいなそんな感じ。

マンガはマンガとして描かれるべきだからそれ自体を否定するわけではないし、
それなりに楽しかったんだけど、やっぱりバランス崩れて薄くなるなとも思ってしまったのよね。

ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (中) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (中) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (下) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (下) (角川文庫)

まぁ、原作読んでみるしかないかな・・・。

最近、児童文学、ファンタジー系、エンタメ小説とかの熱が再燃してる。

マンガ読みすぎて飽きてきたのもあるのかな。
散々マンガ読んどいてなんだけど、なんか、小説の方が密度高い気がしてきちゃった今日この頃。

時間よ止まれ、このフレーズが流行ったのはこの作品が原点!? 手塚治虫/ふしぎな少年

時間が止められる少年が、色々な事件事故を解決する物語。

本人の回想によると、NHKでの連続ドラマ用に作った作品らしい。

ネタバレでもなんでもないのだけど、ラストシーン、読者に語りかけるように終わるのは1つの特徴。
作中の人物が、読者に語りかけるという手法は今となってはよくある話かもしれないが、
当時はそれなりに新鮮だったのではあるまいか。

また、この作品が3次元の世界を超えて4次元の世界へというテーマだっただけに、
作中にとどまらないキャラクターの言動は、4次元的とも言える。

お話として読める最低限のレベルはクリアしてるので、
今読んでもそこまで苦痛ではなかったな。

「時間よ、止まれ」というセリフはこの作品がオリジナルっぽいぞ。
その後、作品のタイトルなどに使われるようになったと、
ちょっと自慢げに手塚治虫自身があとがきで語ってました。

時間よ止まれ

時間よ止まれ

時間よ止まれ

時間よ止まれ

時間よ止まれ

時間よ止まれ

ひとまず、永ちゃんの時間よ止まれが聴きたくなった今日この頃!

東北新幹線の中という制約の中で疾走するドラマ!! 伊坂幸太郎/マリアビートル

緊張と緩和。
これが物語に人を惹きつける基本なんだと、誰かが言っていた気がするんだけど、
まぁ、大筋それには同意する立場。

で、物語の緊張感は制約があればあるほど盛り上がる。

そのための舞台設定ってとっても重要だと思うのよね。

で、この小説は舞台が東北新幹線
その設定を聞いた瞬間、あ、これは面白いんだろうな、と思ったのでした。


新幹線はサスペンスの舞台としては最高。
移動中は密室。

行き交う人、でも隠れられる場所は少しだけある。
駅に着けば、逃げるチャンスも、助っ人も、あるいは新たな敵さえも出てこられる。
つまり、物語に新たな条件を追加していけるわけだ。

どうする?どうする!?どうするのよー!?!?!?ってのが緊張であり、
そこを無事に乗り切ることでふぅっと安心するのが緩和。
そしてこの緩和が、カタルシスなんだよな。

というわけで、電車は古今東西物語の名舞台として登場してきた。

アガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』も電車が舞台であり、
その舞台設定が故に引き込まれるっていう側面があるよね。


ジョジョでも電車を効果的に使ったストーリーがあったよね。
あれって5部だっけ?6部だっけ??

物語の中身とは関係ないけど、まぁ、舞台設定からして秀逸なんだよ、この小説は。

そして登場人物もどこか変な人たちばかりで好感が持てる。
二人組の殺し屋、檸檬と蜜柑、好きだな。

ちょっとバカなんだけど、トーマスが大好きっていう設定も最高だぜ。
そしてこの物語の舞台が電車である以上、電車が好きなキャラクターはいるべきだし、
だからと言って鉄オタではなく、トーマスが好きというずらし方で持ってきたこの演出に勝手に感動。

この作品きっかけで、アマゾンプライムビデオで子供と一緒にトーマス見はじめちゃったからね。
↓これ
http://amzn.to/2AXF5Wt


というわけで、伊坂作品をそんなに読んでるわけじゃないのだけど、非常に面白かったです。

物語として面白いだけではなくて、色々なウンチクが詰まってるのも魅力なのよね。
人との関係におけるヒエラルキー的なことにおいても、下記の文章は非常に鋭い。

友人同士の会話の中で、「ださい」であるとか、「しょうもない」であるとか、「くだらねー」であるとかそういった、否定の言葉をさりげなく用いることで、ある種の力関係を作り出すことができる、と知っていた。その、「ださい」「くだらない」にまったく根拠がないにもかかわらず、影響力がある。「君のお父さん、ださいね」であるとか、「君のセンスは目も当てられない」であるとか、相手の重要な根幹を、曖昧に否定することは有効だった。  そもそも、自分の価値観にしっかりとした基準や自信を持っている者は多くない。特に年齢が若ければ、その価値の基準は常に揺れ動いている。周囲に影響を受けずにはいられないのだ。だから王子はことあるたびに、確信を匂わせ、侮蔑や嘲笑を口にした。すると、それが主観を超えた客観的な物差しとなり、相手との立場の違いを明確にすることがよくある。

いわゆるマウンティングのノウハウ的なものだけど、
確かにこう行った振る舞いは人よりも優位な立場に立ちやすい。

こういう薀蓄もまた小説の愉しみだよね。

思っていた以上に名作で素直に感動してしまったよ。そしてなんか自転車乗りたくなった!! 渡辺航/弱虫ペダル

いつの間にやら52巻も出ている長寿作品になっているけど、
今まで全く読んだことがなく・・・。

舞台の噂は聞いてたんだよ、ハンドルだけ握った人たちがめっちゃ漕いでる舞台だって。
滑稽に聞こえるかもしれないけど、その姿はマジで乗ってるみたいに感じられるらしいぜ。

で、ずっと気になっていたので一気読み。

主人公は冴えないオタクの小野田坂道くん。
千葉から秋葉原まで電車賃を浮かすために自転車で通っていたという生粋のオタク。
その日課が彼を強靭な自転車乗りとして育んでいたとは・・・っていう流れ。

先輩や同期に恵まれ、自転車を通じて成長していく青春もの。
そしてある意味ジャンプよりジャンプらしい友情、努力、勝利が詰まってる。

自転車競技がこんなにチームワークの必要なものだとは思いもよらなかったし、
ものすごいカロリーを消費する過酷なものだってことも知らなかった。

ただ、周りにも数人自転車乗りはいるので興味は持ってたんだよね。
『じこまん』読んだ時も、ちょっと欲しいなって思っちゃった。

www.book-select.com

ただ、危ないは危ないんだよね。。。
めっちゃスピード出るしさ。
自民党の谷垣元総裁は自転車の事故で頸髄損傷してしまって政界引退にまで至ってしまっている。

それでもちょっと乗ってみたいなぁ、とこの漫画を読んだら思いました。
家族でサイクリングとかしてみたい。

基本的に恋愛要素がなく、キャラの濃い男子ばかりが出てくるあたり、
腐女子の心もがっつり掴んでるんだろうなぁ。

男同士の友情とか信頼とかそんな熱いやりとりが、
ストレートに繰り出されてて、ここまで素直に迸ってる感じも
今の時代の漫画には少なくて新鮮なんじゃないかなぁ、と。

悪役、ライバル役の御堂筋くんが最高に気持ち悪くて、
暑苦しい男の友情物語に対してこれでもかというくらい揺さぶりをかけてくれる。
思いつく限りの罵詈雑言を浴びせ、動揺させ、勝利に執着する姿は、
主人公たちに感情移入するための重要なファクター。

御堂筋くんがおらんようになったらこの漫画の魅力は7割減してしまうんじゃなかろうか。
というわけで、名悪役ランキングがあれば上位にランクインすることは確実。

それと主人公がアニソン歌って加速するとか最高の設定だよね。
でも最近、彼のオタクぶりが炸裂してなくてただのいい人になってしまってる気がする。
彼はオタクであるからこそ魅力的なのだ。
ただのいいやつにならないでくれー、と最近の展開を見て思ったのでした。

自分が時代遅れになってきていた、と回想される時代の作品。確かにもうどうしようもなくつまらない。 手塚治虫/ジェットキング

全集をかたっぱしから読んでいこうとしているから読んでいるのであって、
正直、人に勧められる類の作品ではない。。。

ジェットキング

ジェットキング

関西からは劇画という新たなマンガ表現が登場し、
手塚治虫などは当時既に古い作家、時代遅れの漫画家、といった
立ち位置に追いやられようとしていた、と回想している。

新たな作品を、と模索しようとはしていたみたいだけど、
こういう駄作をとにかく書き散らしてもいた。

数多くの名もなき駄作の屍をこえて、名作が生まれていたってのがよくわかる。
当時はそういう駄作も世に出す機会があった。

今の漫画家はボツになって世に出ないものも多いからなぁ。

ただ、もうネット時代なんだから発表の場には事欠かないわけで、
手塚治虫ばりの多作作家が出てきてもいいよね。

ほとんど駄作でも書き続けることはとても大切、とこれを読んでると思う。

ジェットキング

ジェットキング

名作の誉れ高いけどなんかエログロっぽいから避けてきたのは間違いだった。傑作!! 山口貴由/シグルイ

まぁ、相当癖が強い絵ですよ。
でも絵の癖の強さなんか気にならないくらい、ものすごい物語。

シグルイ」は「死狂い」の意味。

その意味通り、全編にわたって狂気に満ちている。

江戸時代に実際にあった真剣での御前試合という狂気のイベントに参加した剣士のお話。
そこに至るまでの奇縁、因縁を描いているのだけど、とにかく話の密度がすごい。

原作は南條範夫の『駿河城御前試合』という小説。
これを読んだ作者が惚れ込んでしまったらしい。

ちなみに今検索したら、原作の小説の他にも、
これを元にした漫画が出ているみたいね。

駿河城御前試合 (徳間文庫)

駿河城御前試合 (徳間文庫)

駿河城御前試合

駿河城御前試合

まだ読んでないのでなんとも言えないけど、
シグルイ以上にこの題材を描けるなんてことがあるんだろうか。
一読すればわかるけど、この作品に込められたパワーは尋常じゃない。
作者も魂込めて描いてるなーって感じられる作品なので。

剣士の話なので、戦い、傷つき、悲惨な死を迎えるキャラクターばかりなのだが、
なぜだか、これだけ死が身近な物語は、却って生を強く感じさせる。

エログロっぽいとかそういう上辺の話じゃなくて、
読んでいる人の心をなんらか動かし、揺さぶる強い作品。

これだけの熱量ある作品にはなかなか出会えないので、
死ぬまでに読んでおいた方が良い必読書入りだなー、これ。