Book Select 本を選び、本に選ばれる

読んだ本にまつわる話を書き綴っていくことにしました。マンガが大半を占めていますが小説も好き。マンガはコミックで読む派。本は買って読む派なので常にお金と収納が足りません。例年1000冊以上コミック読んでます。ちなみに当ブログのアフィリエイト収入は昔は1000円くらいいった時もあったけど、今では月200円くらいです(笑)みんなあんまりマンガは買わないんだなぁ。。収入があった場合はすべて本の購入に充てられます。

思っていた以上に名作で素直に感動してしまったよ。そしてなんか自転車乗りたくなった!! 渡辺航/弱虫ペダル

いつの間にやら52巻も出ている長寿作品になっているけど、
今まで全く読んだことがなく・・・。

舞台の噂は聞いてたんだよ、ハンドルだけ握った人たちがめっちゃ漕いでる舞台だって。
滑稽に聞こえるかもしれないけど、その姿はマジで乗ってるみたいに感じられるらしいぜ。

で、ずっと気になっていたので一気読み。

主人公は冴えないオタクの小野田坂道くん。
千葉から秋葉原まで電車賃を浮かすために自転車で通っていたという生粋のオタク。
その日課が彼を強靭な自転車乗りとして育んでいたとは・・・っていう流れ。

先輩や同期に恵まれ、自転車を通じて成長していく青春もの。
そしてある意味ジャンプよりジャンプらしい友情、努力、勝利が詰まってる。

自転車競技がこんなにチームワークの必要なものだとは思いもよらなかったし、
ものすごいカロリーを消費する過酷なものだってことも知らなかった。

ただ、周りにも数人自転車乗りはいるので興味は持ってたんだよね。
『じこまん』読んだ時も、ちょっと欲しいなって思っちゃった。

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ただ、危ないは危ないんだよね。。。
めっちゃスピード出るしさ。
自民党の谷垣元総裁は自転車の事故で頸髄損傷してしまって政界引退にまで至ってしまっている。

それでもちょっと乗ってみたいなぁ、とこの漫画を読んだら思いました。
家族でサイクリングとかしてみたい。

基本的に恋愛要素がなく、キャラの濃い男子ばかりが出てくるあたり、
腐女子の心もがっつり掴んでるんだろうなぁ。

男同士の友情とか信頼とかそんな熱いやりとりが、
ストレートに繰り出されてて、ここまで素直に迸ってる感じも
今の時代の漫画には少なくて新鮮なんじゃないかなぁ、と。

悪役、ライバル役の御堂筋くんが最高に気持ち悪くて、
暑苦しい男の友情物語に対してこれでもかというくらい揺さぶりをかけてくれる。
思いつく限りの罵詈雑言を浴びせ、動揺させ、勝利に執着する姿は、
主人公たちに感情移入するための重要なファクター。

御堂筋くんがおらんようになったらこの漫画の魅力は7割減してしまうんじゃなかろうか。
というわけで、名悪役ランキングがあれば上位にランクインすることは確実。

それと主人公がアニソン歌って加速するとか最高の設定だよね。
でも最近、彼のオタクぶりが炸裂してなくてただのいい人になってしまってる気がする。
彼はオタクであるからこそ魅力的なのだ。
ただのいいやつにならないでくれー、と最近の展開を見て思ったのでした。

自分が時代遅れになってきていた、と回想される時代の作品。確かにもうどうしようもなくつまらない。 手塚治虫/ジェットキング

全集をかたっぱしから読んでいこうとしているから読んでいるのであって、
正直、人に勧められる類の作品ではない。。。

ジェットキング

ジェットキング

関西からは劇画という新たなマンガ表現が登場し、
手塚治虫などは当時既に古い作家、時代遅れの漫画家、といった
立ち位置に追いやられようとしていた、と回想している。

新たな作品を、と模索しようとはしていたみたいだけど、
こういう駄作をとにかく書き散らしてもいた。

数多くの名もなき駄作の屍をこえて、名作が生まれていたってのがよくわかる。
当時はそういう駄作も世に出す機会があった。

今の漫画家はボツになって世に出ないものも多いからなぁ。

ただ、もうネット時代なんだから発表の場には事欠かないわけで、
手塚治虫ばりの多作作家が出てきてもいいよね。

ほとんど駄作でも書き続けることはとても大切、とこれを読んでると思う。

ジェットキング

ジェットキング

名作の誉れ高いけどなんかエログロっぽいから避けてきたのは間違いだった。傑作!! 山口貴由/シグルイ

まぁ、相当癖が強い絵ですよ。
でも絵の癖の強さなんか気にならないくらい、ものすごい物語。

シグルイ」は「死狂い」の意味。

その意味通り、全編にわたって狂気に満ちている。

江戸時代に実際にあった真剣での御前試合という狂気のイベントに参加した剣士のお話。
そこに至るまでの奇縁、因縁を描いているのだけど、とにかく話の密度がすごい。

原作は南條範夫の『駿河城御前試合』という小説。
これを読んだ作者が惚れ込んでしまったらしい。

ちなみに今検索したら、原作の小説の他にも、
これを元にした漫画が出ているみたいね。

駿河城御前試合 (徳間文庫)

駿河城御前試合 (徳間文庫)

駿河城御前試合

駿河城御前試合

まだ読んでないのでなんとも言えないけど、
シグルイ以上にこの題材を描けるなんてことがあるんだろうか。
一読すればわかるけど、この作品に込められたパワーは尋常じゃない。
作者も魂込めて描いてるなーって感じられる作品なので。

剣士の話なので、戦い、傷つき、悲惨な死を迎えるキャラクターばかりなのだが、
なぜだか、これだけ死が身近な物語は、却って生を強く感じさせる。

エログロっぽいとかそういう上辺の話じゃなくて、
読んでいる人の心をなんらか動かし、揺さぶる強い作品。

これだけの熱量ある作品にはなかなか出会えないので、
死ぬまでに読んでおいた方が良い必読書入りだなー、これ。

リボンの騎士はのちに双子を産み母となり・・・続編があったの知ってた? 手塚治虫/双子の騎士

この作品、まさかのリボンの騎士の続編なのである。

リボンの騎士が双子を産んで母になってた!

双子の騎士 (手塚治虫文庫全集)

双子の騎士 (手塚治虫文庫全集)

双子の騎士

双子の騎士


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なんだか幸せそうだけど、この双子のどちらにつくかで宮廷内が勝手に2派に分かれてしまう。

男子は城から盗み出され、森に捨てられるが、
王達はそれを明かさず、残された姫を日毎に男装させて王子役やらせたり、
姫として出てきたりしながら誤魔化すという話。

まぁ、リボンの騎士に続編があったとは知らなかったので、
そこだけがサプライズってなもんで、
内容的には陳腐ではある。。。

まぁ、続編があることすら知られていないほど、つまらん、ということでもある。

いやはや、しかし本当に色々描いてるんだね。
とにかく書き散らしているという印象も強いけど。

双子の騎士 (手塚治虫文庫全集)

双子の騎士 (手塚治虫文庫全集)

双子の騎士

双子の騎士

圧倒的な個性と才能を感じる作家。常に応援したい気持ち。 黒田硫黄/大日本天狗党絵詞

学生の頃読んで衝撃を受けた思い出の作品。

なんつーか、絵が驚きだったのよね。
全部筆で描かれた絵のインパクトが凄かった。



物語はほとんど覚えてなくて、再読したらあぁ、こんな話だったのねって感じ。
でも、ずーっと黒田硫黄、すげえなぁ、という衝撃だけは残ってたな。

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こんな感じの絵ね。全て筆で描かれていて、独特な世界観を生み出してる。
別に筆で書くことがすごいっていうわけじゃなくて、
絵がなんか独特の雰囲気を醸し出していてすごいな、と思ったのだよ。

物語は、幼い頃に天狗にさらわれ、天狗としての力に目覚めた少女と、
人に紛れて生きている天狗たちが、日本を天狗の国にしようと画策する話。

なんかこう、物語は所々脈絡ないし、めちゃくちゃ面白いわけではないんだけど、
この人には圧倒的な個性と才能を感じるんだよねぇ。

だからずっと気になってしまう。

体調不良などが続き、あまり多くの作品を描けてないようだけど、
この才能を生かしてたくさんの作品を生み出してほしいな。

ちなみに、お話としてはセクシーボイス アンドロボが大好きよ。

なんか、持ってるのに電子版も欲しくなってきたなぁ。。。

当時はまだ学生だった松本零士に手伝ってもらった作品 手塚治虫/旋風Z

全集とはコレクションアイテムであり、
その圧倒的なボリュームを所有することの満足感はあるのだけど、
1つ1つの作品が面白いわけではなく、
片っ端から読もうと思ってもなかなか進まない。。。。

それでも手塚治虫漫画全集はとにかく自身によるあとがきがすこぶる面白い。

旋風Z (手塚治虫漫画全集)

旋風Z (手塚治虫漫画全集)

旋風Zで語られる裏話は特に面白く、
編集者に嘘つきまくって逃げていたこと、九州へ逃げて
当時学生だった松本零士に手伝ってもらったこと、
阿蘇山に行ってみたら遭難仕掛けて死を覚悟したこと、などが語られている。

本作ではジェットというアンドロイドが出てくるんだけど、
本人曰く、身の回りを世話してくれる妻が欲しいという思いが
現れているのでは、ってことらしい。

ほんまかいな。

旋風Z (手塚治虫漫画全集)

旋風Z (手塚治虫漫画全集)

昔から才能に溢れている作家だったんだよ、一気読みするしかない作家。 三宅乱丈/pet

人の精神の中に入り込んで、その精神世界を弄ることで
人を廃人にしたり、記憶を書き換えたりできる能力を持つ人たちのお話。

そんだけすごい力を持っているのに、組織に飼われていて、
命令に従いながら生きている。
組織は彼らのことをpetと呼んで、道具としか思ってないのだけど・・・。

といった、設定の三宅乱丈の初期の傑作。
人の精神の中には、明るく楽しい思い出であるヤマと、
暗くて辛い思い出のタニがあるっていう設定とか、
三宅乱丈独特の世界とルールが構築されている。

この独自の世界とルールを構築する力こそが三宅乱丈の真髄な気がしていて、
その才能が『イムリ』というファンタジーに結実したんじゃなかろうか。

そんなことを読みながら感じた作品。 

その独自の世界とルールは、緻密であるがゆえに、ともすればわかりづらさを伴う。
呼んでいてもついていけなかったり、忘れちゃったり。
だから、三宅乱丈の漫画は一気読みこそが正しい読み方なのだ。

でも、しばらくするときっと忘れちゃう。
だから、また読み返すときも一気読みで。