Book Select 本を選び、本に選ばれる

読んだ本にまつわる話を書き綴っていくことにしました。マンガが大半を占めていますが小説も好き。マンガはコミックで読む派。本は買って読む派なので常にお金と収納が足りません。例年1000冊以上コミック読んでます。ちなみに当ブログのアフィリエイト収入は昔は1000円くらいいった時もあったけど、今では月200円くらいです(笑)みんなあんまりマンガは買わないんだなぁ。。収入があった場合はすべて本の購入に充てられます。

50年以上前の作品とは思えないSF初心者でも楽しめる、ロボットが相棒の推理もの。アイザック・アシモフ/鋼鉄都市

SFは全然詳しくない。
でもKindleで大規模セールがやっていたので、色々とオススメされている作品を買い漁ってみた。
鋼鉄都市はその中でも多くの人がオススメしていた作品で、
なんでもロボットとのバディものと聞いて興味を持った。

鋼鉄都市

鋼鉄都市

地球人の子孫ではあるのだけど、宇宙を支配している宇宙人。ロボットが活用され、人の仕事も奪われてきていて、地球人のロボットへの反感が高まっている世界で、ある日、宇宙人の惨殺事件が起きる。
その調査を命じられたのが主人公の刑事で、相棒がロボットのダニール。

このダニールは、ロボットであることが見分けられないくらい精巧に作られている。
一方、人間が扱うロボットは、人型でもロボットと見分けがつくように作られている。
そんなロボット然としたロボットに対しては嫌悪感を持つダニール。

「もちろん不満ですとも。あんな、人間の姿の最大公約数的なパロディを、同類と認めることは不可能です。地球の技術では、あれ以上のことはできないのですか?」 「むろんできると思うよ、ダニール。ただ、われわれは、相手が人間なのか、人間でないのか、わかるほうが好きなのさ」

でも人間は、区別をしたい。
あいつらは自分たちとは違うものだ、と言う区別。
境界線がないとアイデンティティが保てないのかな?
コミュニティの内と外の区別があるからこそ居心地の良いコミュニティが形成されるのか。
色々示唆に富むフレーズ。

そしてこれが50年前の作品だとは思えないくらい、現代の問題に通じる話が散りばめられている。

人間には、人間としての能力を持ったロボットを造ることはできないんだ。まして、よりまさったロボットなんて無理な話だ。美的センスとか、倫理観とか、信仰心を備えたロボットも造れない。電子頭脳は、唯物主義から一インチでも出ることはできないからね。  そんなことはできない相談で、ぜったいにできないのだ。われわれの脳を動かしているものがなにかを理解しないかぎり、できない。科学が測定できないものが存在するかぎりできない。美とはなにか、あるいは、良心とは、芸術とは、愛とは、神とは? われわれは永遠に、未知なるもののふちで足踏みしながら、理解できないものを理解しようとしている。そこが、われわれの人間たる所以なんだ。

これなんて、まさに新井紀子さんの本にも書いてあった今、AIと呼ばれているものの限界の話に通じる。

digima.hatenablog.jp

我々の脳を動かしているもの、は未だに解明されてない。
だから現時点でのAI万能説はただの煽り。
飛躍的に進化していることは間違いないし、ひょっとすると理屈のわからないままに
再現できてしまうこともあるのやもしれないが・・・

普段読み慣れていないSFだけど、意外と面白いもんなんだな、と。

他にも、世の中どこにでもある不条理をロボットであるダニールが論理的に語る所とかが、このキャラを魅力的にしている。
例えばこう言うセリフ。

「正義には段階があります、イライジャ。小さな正義が大きな正義と相容れないとき、小さな正義は負けるのです」

この身もふたもない話をする相棒、と言う設定は結構好みだし、読者も感情移入しやすい仕掛け。
それによって、そうだよね簡単に言ってくれるな、と思いながらも、
そうは言ってもさぁ、という感情も掻き立てられる訳で、まさに読者と主人公を同じ思いにしやすいから。

しかしSFと言う広大なジャンルもまた面白い本が多そうで時間がいくらあっても足りないね。


鋼鉄都市

鋼鉄都市