Book Select 本を選び、本に選ばれる

読んだ本にまつわる話を書き綴っていくことにしました。マンガが大半を占めていますが小説も好き。マンガはコミックで読む派。本は買って読む派なので常にお金と収納が足りません。例年1000冊以上コミック読んでます。ちなみに当ブログのアフィリエイト収入は昔は1000円くらいいった時もあったけど、今では月200円くらいです(笑)みんなあんまりマンガは買わないんだなぁ。。収入があった場合はすべて本の購入に充てられます。

人の後ろ暗い欲望を切り出す姿には文学を感じる。 押見修造/漂流ネットカフェ

人の本性とか、本能とか、そういうものを抉るような作品が好き。
綺麗事じゃなくて、本能に理性が勝てない、みたいな瞬間をちゃんと描けるやつ。

頭で思った通りになんか物事は進まないし、
人間はなんだかんだ色んな欲望にまみれている。

その欲望と個々人がそれぞれのバランスで折り合いを
つけながら社会生活を営んでいると思っているのだけど、
その折り合いのつけ方こそが個性。

きっと他人からすれば意味がわからない折り合いのつけ方ってのがあるわけで、
端から見れば変態だなぁ、と思うようなことも、
当人の中では大事なバランス制御なんだろうなと思ったり。

あるいはバランス取るつもりがバランスが崩壊しているパターンもあるのだろうけど。

まぁ、何言ってんだかって感じだけど、
とにかく人間の醜い欲望が描かれる作品てのが大好きです。
人間だもの。

聖人君子ヅラしてる人は信用できなくて、むしろそういう人の欲望を覗き見したい。
押見修造は、そういうどろっとした人の暗部に切り込むから好き。
他の作品も一貫して人の性(サガ)みたいなものに向き合っているし、
中二病っぽいやや過剰なテンションも押見作品のスパイスだろう。

あと、そんな押見作品の本筋からは特に関係ないかもしれないけど、
あるある的な人間観察もしっかりできてるのも面白さの秘密か。

例えばこんなの。

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もちろん戯画化されたステレオタイプな表現なんだろうけど、
鬱陶しさを見事に再現できてるよなぁ、と感心してしまった。


どんなに聖人君子ヅラしていても男だったらほぼみんなオナニーしてるわけだよ。 山本英夫/新のぞき屋

人の秘密を覗き見るのぞき屋のお話。

探偵みたいなもんで、調査依頼されて対象を覗くってパターンのお話が多いのだけど、
のぞくことで思いもしなかった裏の顔が浮き彫りになる。

人は日々、社会生活を送っていく上で仮面をかぶって生きているわけで、
その仮面の下には様々な欲望がうごめいている。
人間てそんなもんだと思っていて、どんなに聖人君子ヅラしていても
男だったらほぼみんなオナニーしてるわけだよ。

学校の先生だろうが、立派な学者だろうが、
飛ぶ鳥落とす勢いの経営者だって、
本当は皆ゲスな一面も持っている。

人間だもの。

新のぞき屋1巻

新のぞき屋1巻

で、この作品のテーマもそういう表には出してない人の本性、みたいなもの。
1つ1つの話が、ちょっとキモいくらい歪んでる人が出てきたりするけど、
まぁ、そういう人もいるよね、人間だもの。

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本筋とは違う話なんだけど、上の画像のカットに苦笑い。
自分の娘に懸想する親父の話があるのだが、
まぁ確かに嫁の劣化でうんざりしている世の夫はたくさんいるだろうな、と思いつつ、
でも娘にいく奴はごくわずかだと思うのだが、、、そこは漫画ってことでご愛嬌か。
逆にあまり劣化してると旦那さんが歪みますよって言ったら
世の妻たちはもう少し気にするんだろうか・・・。

そんなことも思ってみたり。

とにかくやっぱり山本英夫は才能の塊。

新のぞき屋1巻

新のぞき屋1巻

性転換ラブコメディのレジェンドコミックらしいぞ! あろひろし/ふたば君チェンジ

性転換ラブコメディのレジェンドコミック、と書いてあった。
その表現もちょっと面白い。

で、その煽りの通り、主人公は思春期の男子なのだが、
突然女の子に変わってしまうという体質の持ち主。
その体質は一族に受け継がれたものであり秘密なのだけど・・・。

ちなみに、海外での評判も高い作品なんだそうな。
なぜなら普通のラブコメだと主人公が告白しないで苦悩してる姿が共感されないらしい。
いや、好きなら好きっていえよってことなんだろうな。
でもこの作品の場合、女性に変わってしまう体質という秘密を守るためにも、
好きな子に言いたくても言えない、ってなるわけ。
だからその苦悩に追い込まれる理由みたいな所への納得感があるんだそうな。

ちなみに連載されていたのは月刊少年ジャンプで1990年頃。
懐かしさを感じる人もいるんだろうけど、自分は初見でした。

なんというか普通に楽しかった。

女性が描く女性の性欲なのだが・・・ さんりようこ/ひとには、言えない

女性漫画家が萌え絵で描く、女性の性欲。

まぁ、女性が描くからリアルだとか言うつもりはないけれど、
女性が女性の性欲を書くというシチュエーション自体が
妄想を掻き立てる要素ではある。

本当は女性なんだけど、男っぽいペンネームにしている人もいるし、
男だけど、女のペンネーム使ってる人もいる。

まぁ雑誌と作品の立ち位置でその辺は決まってくるのかしらね。

で、女性が描く女性の性と言いつつも、ここで描かれているのは、
結局男性読者が喜ぶようなエロい女の子でしかない。

読者の望む姿をお届けしている感じにしか思えないけど、
そうなると男のやや歪んだ妄想と結果変わらないじゃん、ってことに。

まぁ、下ネタ好きだから面白いけど、
1冊の雑誌の中で毎号ちょろっと箸休め的に入っているのと、
こうやってまとめて一気に読むのとでは全然違う。

なんというか、密度が濃くてすぐにお腹いっぱいになるのでそのつもりで。
4コマってほんと続けるの大変そうだなぁ、なんてことも思った今日この頃。

好きなものに素直に生きる様子が超面白い。飛行機大好きミリオンマイラーの生き様! パラダイス山元/飛行機の乗り方

飛行機に乗ることが無常の喜びというミリオンマイラー
この著作自体、飛行機の中でだけで書き上げたというのだから筋金入り。

自分はインドア派で、積極的に旅行に行くわけでもないんだけど、
最近は子供を色んなところに連れて行ってあげたい気もしていて、
このインドア派の行動パターンを変えようかなぁ、と思っていた。

で、出会ったのがこの本。

パラダイス山元の飛行機の乗り方

パラダイス山元の飛行機の乗り方

自分とは全く違う行動パターンの人の本を読んだら、
自分の知らない楽しさにも出会えるかもしれないし、
そうしたら自分も変わるかも、と思って。

しかしまぁ想像を絶する飛行機への耽溺ぶり。
もともと鉄道好きとかでもない自分には真似をするにはハードルが高すぎたかもしれない。。。
でもその分、読み物としてはぶっ飛んでいて面白かった。

到着地に着いた機体でそのまま往復してくる「タッチ」(滞在時間は30分以内)とか
考えたこともなかった。
確かに、乗り物に乗ること自体が目的化したっていいよね、好きなんだもん。

この好きなものに対して端から見れば常軌を逸した耽溺ぶりというのは、
突き詰めれば好きなものは好き、という素直さ。
好きなものに対しての素直さというのはとても素晴らしいことだ。

自分もなるべくその時々の好きなことに素直でありたいな、と思った今日この頃。

パラダイス山元の飛行機の乗り方

パラダイス山元の飛行機の乗り方

処女作かつポワロ初登場。 アガサ・クリスティー/スタイルズ荘の怪事件

アガサ・クリスティの処女作にして、名探偵ポワロ初登場。

資産家の女性が年下の男とくっついて、
周囲からとやかく言われてるところで、死ぬ。

義理の息子?旦那?それとも??

犯人はこの中にいる的な状況で起きる死亡事件を
その場に居合わせてしまったヘイスティング氏の依頼で調査することになったのがポワロ。
ヘイスティングは悪いやつじゃないんだけど、ポワロの引き立て役で凡庸なキャラ。
まぁ、探偵ものにはこういった引き立て役が必要なわけだ。

スタイルズ荘の怪事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

スタイルズ荘の怪事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

そもそも自分はあまり推理小説やミステリーの類を読んでいない。
気楽に楽しめる娯楽としていつか読もうなんて思っていたけど、
Kindleで半額セールがやっていたもんだから、図らずもそれがきっかけになった感じ。

推理ものって子供の頃、赤川次郎の三毛猫シリーズを少し読んだ記憶があるけど、
基本的に種明かしをされるとなんか釈然としない気持ちになる。
敬遠してたのってその釈然としない気分が嫌だったからってのもあるのかもな。

でも大人になった今は、その釈然としなさも含めて楽しめる気がする。
というか、別に人が死ぬ、犯人は誰なのか、その種明かし以外にも面白い要素はある気がする。

スタイルズ荘はこのトリックがどの程度すごいのかはよくわからないけれど、
作者が読者にこいつは犯人じゃない、と思い込ませてからひっくり返すっていうことがしたかったんだろうな。

その試み自体はあー、なるほどって思いました。

あと、唯一読んだことがあった『春にして君を離れ』にも通じるんだけど、
凡庸で退屈な田舎の暮らしの息苦しさみたいなものが時折出てくるよね。

www.book-select.com

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

大して読んだわけじゃないけどそれってクリスティ自身が感じている閉塞感であり、
息苦しさのようなものが時折顔を出してきてるってことなんだろうな。

「あなたにはわからないわ、わかりっこないわ、このいまわしい屋敷が、わたしにとってはずっと牢獄だったことなど!」

本作品の中にもこんなセリフが。
クリスティーの作品に出てくる女性は何かしら制度や伝統、
社会的な良識みたいなものに抑圧されてる。

トリックがどうとかよりも、
そういった描写がちょっと面白いから意外とハマってしまうかも。


スタイルズ荘の怪事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

スタイルズ荘の怪事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

プロレス見たことない初心者でも本としてはおもろい。 原田久仁信・梶原一騎 /プロレススーパースター列伝

プロレスには全く興味がなかったのだけど、
ここにきて、にわかに関心が。

なんというあの演出という名のやらせというか、
そんなアホなとツッコミを入れたくなるような世界観。

スターレスラー、一人一人のエピソードもツッコミどころ満載で、
なんというかこの壮大な作り物の世界が実は楽しいんじゃないかと思い始めてきた次第。

で、出会ったのがこの本。

梶原一騎が原作で、昭和のスーパースターレスラーのエピソードを取材し漫画にしたものなのだけど、
これがまぁなんとも香ばしい面白さ。
どんだけ人間離れした怪人なんだっていうエピソードが目白押しかと思えば、
苦労話、人情話も出てくるのだが、往々にして大袈裟だし、
梶原一騎的男臭い価値観がストレートに出ていて、それも面白い。

苦労話なんかでいうと、例えばこんなの?

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涙でパンを食ったことのあるやつしか、ってくだりとか実に男臭いフレーズでおもろい。

他にもこの漫画の特徴としては、猪木コラムがあること!
例えば下の見開きの右上のコマがその猪木コラム。

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猪木が自分とその選手の思い出を語るコーナーなのだが、
基本猪木は猪木凄いをベースにしながら話す。
まぁ、凄いんだろうけど、その上から目線も結構ツボ。

というわけで、今更だけど、昭和のプロレスが見たくなった今日この頃。
昔、燃えろ!新日本プロレスっていう分冊百科あったよなぁ。
あれなんかが入門にはちょうど良いような気がしてるんだけど。。
オークション漁ってみようかしら。