Book Select 本を選び、本に選ばれる

読んだ本にまつわる話を書き綴っていくことにしました。マンガが大半を占めていますが小説も好き。マンガはコミックで読む派。本は買って読む派なので常にお金と収納が足りません。例年1000冊以上コミック読んでます。ちなみに当ブログのアフィリエイト収入は昔は1000円くらいいった時もあったけど、今では月200円くらいです(笑)みんなあんまりマンガは買わないんだなぁ。。収入があった場合はすべて本の購入に充てられます。

フリッツ・ラングの映画のタイトルと、写真で見たワンシーンから生まれた傑作。 手塚治虫/メトロポリス

手塚治虫作品の中でも割と最近映像化されたりしている作品。
つまりとても名作と世評が高いお話でもある。

メトロポリス

メトロポリス

メトロポリス [DVD]

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まぁ、何度か言ってるけど、何がすごいって
物語の題材の先進性だよね。
メトロポリスは人工細胞による人造人間がテーマのお話。

その力を欲する大人の事情に翻弄され、
やがて自分が人造人間だと知り
自らを生み出した人類に復讐するというお話。

もう、いわゆる科学技術の進化が人類を滅ぼす的な話だったり、
人工的に人を作る、超人的な人造人間の話だったり、
人が生み出したものが人に復讐するであったり、
もう普遍的な物語の型が詰まってる。

今読んで面白いかどうかは置いといて、
さすがにこれはすごいよなーって思うよね。

ちなみに、メトロポリスフリッツ・ラング監督の映画が有名ですが、
この映画本編は見ていなくて、タイトルと写真1枚見て、着想したらしい。

だから、話は全然関係ないし、パクってもいないんだよ。
結構そこら辺を誤解されるみたいで、
本人が解説で強調してました。

やはり、手塚治虫全集は本人のあとがきが最も面白い!

ちなみにフリッツ・ラングは映画史に残る初期ハリウッドの名監督。
第二次世界大戦であらゆるジャンルの世界中の才能がアメリカに亡命してきたけれど、
その中で映画監督といえばこの人って感じ。

『M』とか『死刑執行人もまた死す』とかが代表作。

フリッツ・ラング・コレクション M [DVD]

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中でも『M』は今見ても普通に面白い気がするからオススメ。


メトロポリス

メトロポリス

メトロポリス [DVD]

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今年度、ビジネスマンが読むべきマンガ大賞を選ぶとしたらこれになるんじゃない? 山田胡瓜/AIの遺電子

ビッグデータ機械学習ディープラーニング、AIと、
猫も杓子もそんなようなことを口にしだしている今日この頃だけど、
AIをテーマにした近未来の世界を描いた作品。

チャンピオン連載ということで、まぁややマイナーなのだけど、
IT少しでもかじってるような人たちには楽しめる作品のはず。

UI/UXの世界で著名な深津貴之さんが
めっちゃオススメしてて、静かに盛り上がってきている感じ。
確かに素晴らしい作品だから、うまくプロモーションしたらもっと売れるはず!
ていうか、もっと売れて欲しい!!!
と、自分も読んでみて全力応援モードになったのでした。


お話の世界はAIが当たり前のように実用化された近未来。
人とロボット、そしてその中間に位置するヒューマノイドがいる世界。
そして、人とロボットの境界線ってなんなのだろう?というテーマが
1話完結型のお話として次々と繰り出される。

読んでる感覚としてはブレードランナーの変奏曲をすごい勢いでたくさん見ている感じ。

1話、1話示唆に富む内容でこのクオリティを維持し続けているのは結構驚異的。
正直2、3巻でネタ切れるかな、と思ったんだけど7巻まで出た今でも面白い。

電脳を移し替えれば、それは同一の人なのか、とか
自分の記憶なのか、作られた記憶なのか、とか
脳や感情に対してパッチを当てるように修正していくことが可能になったとしたら、
それは自由意志があるって言えるのかな、とか
ロボットには人間らしい振る舞いを禁止する必要があるとか、
もうほんと様々なテーマ、アイデアの宝庫。
そして、これってもしかすると自分たちが生きてる間に
現実の問題として直面することになるのかもしれない世界なんだよね。

読後感はAIをテーマにした星新一ショートショートを読んでる感覚なんだけど、
最近読んだ別の漫画でもなんかアイデンティティー系の話あったなー、って思ったんだよね。

きまぐれロボット (角川文庫)

きまぐれロボット (角川文庫)

なんだっけなーって考えてたら、思い出しました。
全然、違う作品なんだけど、こちらも注目の作品、『亜人』でした!

亜人(1) (アフタヌーンコミックス)

亜人(1) (アフタヌーンコミックス)

死なない/死ねない 亜人が人類から迫害されてる話なんだけど、
亜人はどんな傷を負っても再生できるのよね。
だから頭切り離されると頭が再生しちゃうわけ。
でも、頭が再生しちゃった亜人は果たしてそれまでと同じ人と
言えるのだろうかっていうテーマがあの作品にも潜んでいるんだよね。

アイデンティティ問題を孕んだヒット作品がじわじわ増えて来ているような気がしていて、
それもまた世相を反映しているって言えるレベルまで売れるかどうか、ちょっと注目してる。

いずれにせよ、『AIの遺電子』もっと全力で口コミが広がると良いなぁ。
すごく楽しみな作品。

未読な方は今すぐ1巻読んでみることをお勧めしますよー!!


落語が好きな人も、そうでない人も面白い、過去にとり殺されそうになった男女の再生の物語。 雲田はるこ/昭和元禄落語心中

落語は好きですか?

 

僕は好きです。

かっこつけない普通の人たちの物語には人間の喜怒哀楽が詰まっているし、

いろんな欲望も描かれている。

 

欲に目が眩むとロクなことはなくて、

義理人情に厚い人が報われたりする。

基本的に気持ちが良い話が多いのが落語。

 

本作の主人公もそんな落語に出てくる与太郎そのまんまの性格なんだけど、

師匠の八雲は対照的に暗く重い過去を引きずっている男として描かれる。

 

 

昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)

昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)

 

 

 

 物語はこの明暗、陰陽を軸にしながら語られるのだが、
基本的に師匠の八雲が陰鬱なキャラクターなので、
落語の話なのに全般に漂うのは暗くどこかアンニュイな雰囲気。
それが物語の色気にもなっていて、
アニメ化の際に主題歌を椎名林檎が作ったのは象徴的だよなぁ、と。

 

 

昭和元禄落語心中音曲噺其の一

昭和元禄落語心中音曲噺其の一

 
昭和元禄落語心中音曲噺其の二

昭和元禄落語心中音曲噺其の二

 

 

まぁこの本に興味を持つ人のうちどれだけの人が落語未経験者で、

これをきっかけに落語に興味を持つのかはわからないけど、

少しでも興味を持ったならば絶対聞いてみることをお勧めしたい!!!

 

ちなみに落語は音だけ聞いてもとても面白い。

寄席で一番嫌がられる客は目をつぶってじっと聞いている客、なんて話があるらしく、

それもそのはず、音だけだとごまかしが効かないんだよね。

 

爆笑問題太田光も無類の落語好きなんだけど、

以前糸井重里との対談で落語を音源で楽しむことに関して話していた。

自分もその記事を読んで敢えて音源で聴くことの面白さを知ってハマっていったのでした。

 

もう14年も前の話なんだけど、その対談、調べてみたら見つかった!!

 

ほぼ日刊イトイ新聞 - 爆笑問題・太田光の家族をつくったゲーム。

 

初心者にもオススメなのは古今亭志ん生古今亭志ん朝、の親子。

どちらもとんでもなくうまい。

そして面白い。

 

 

落語名人会 (1) 古今亭志ん朝(1) 「明烏」「船徳」

落語名人会 (1) 古今亭志ん朝(1) 「明烏」「船徳」

 

 

 

音源でも十分話が理解できて面白いのはさすが、と唸らされる。

大きめのTSUTAYAならレンタルもしてるからそういうところから入門するのもありかも?

 

と、なんか落語のススメみたいな話になってしまったけど、

過去にとり殺されそうになった男女の再生の物語なのよ、これ。

だから、落語興味なくても面白いと思うよ。

 

そして読んだあと少しでも落語に興味を持ったとしたらそれは素晴らしいことだ。

言いたいことはそれだけ。

 

 

 

昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)

昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)

 

 

 

 

元々1000ページあった原稿を400ページに短縮っていくら何でも無理があるでしょ!? 手塚治虫/来るべき世界

手塚治虫の初期SFの名作と言われているらしい!!
アマゾンのレビューも絶賛されとる。

確かに、当時こういった物語は斬新だったんだろうなぁ。
すごいと思うよ、実際。
でも今読んで面白いかは別の話じゃ。



ちなみに、この作品と合わせてSF3部作として世評高いのは
メトロポリスロストワールドね。

ロストワールド

ロストワールド

メトロポリス

メトロポリス


どちらも同名の映画はあるけど、内容は全く関係ない。
パクってないよ、と本人が後書きでも力説してました。
メトロポリスは、タイトルと写真でみたワンシーンから着想を得たらしい。


ま、それはそれとして、来るべき世界である。
原爆実験の放射能の影響で変異した謎の生物フウムーン、とか
地球滅亡に際してのノアの箱舟みたいな話とか、
とにかくスケールがでかく色々な要素が詰め込まれている。
詰め込みすぎなくらい詰め込まれているというこの密度の異常な高さは
初期手塚治虫の特徴。

それぞれの要素で物語作れますよっていう濃いテーマを
これでもかと放り込んでくるから、正直とんでもなくごちゃごちゃした話になる。

でもそれもそのはず、手塚治虫本人のあとがきによると、
元々1000ページあった原稿を400ページに短縮しているんだそうな。
そのせいで前半がよくわからないオムニバスみたいになってしまった、とボヤいてた。

ご本人がおっしゃる通りで、正直前半戦は1つ1つのエピソードが
ものすごくあっさり、すごいスピードで展開していく。
ちょっと話飛びすぎじゃない??ってくらい。

まぁ、そんだけページ削ればそうなるよね。。。
だとするとオリジナルの物語が読みたい!ってのが人情だけど、
使わなかった原稿は、遊びに来たファンとかにあげちゃったりして
散逸してしまったらしい!!!

いやー、なんともったいない。。

最初の1000ページが一体どんな展開だったのか、、、
幻の作品に思いを馳せたくなる、そんな作品でした。

こういうある意味牧歌的なお色気漫画、最近無いよねぇ。 横山まさみち/やる気まんまん

精力剤の老舗・四つ目屋本舗の若旦那、泊蛮平が、
新薬「おとぎ丸」のアピールも兼ねて、10人の女性とセクシー・ファイトに挑むという
昭和のお色気漫画!


やる気まんまん(1)

やる気まんまん(1)


先にイッたら負けっていうルールなんだけど、
精力剤のアピールならすぐに元気になるって方が
正しい気がするんだけど・・・


これじゃただの遅漏薬じゃなかろうか、というツッコミを入れたくなるけど、
いろんなタイプの女性10名とのバトルは、時代を感じて面白い。
いわゆる直接的なエロ漫画ではなくて、娯楽漫画の延長としてのお色気漫画って感じ。
ヒゲとボインとかもそういうジャンルだよね。



こういうなんか牧歌的なお色気漫画って最近あんまりないよなぁ。
これはこれで、誰かに受け継いで欲しい文化というか作風なのだけど。


やる気まんまん(1)

やる気まんまん(1)

期待していなかったけど不意打ちを食らった気分。ただ脱ぎ捨てるだけ、それがサウナだ! 吉田貴司/フィンランド・サガ

なんとなく、ヴィンランド・サガのパロディなのかなってのがタイトル見たときの第一印象。
だけど、まっっったく関係ないです。

なんとテーマはサウナ。
サウナ漫画って初めて読んだ気がする。

これは、謎のサウナチャンピオンと、サウナと、どこにでもいる凡庸な我々との物語。

フィンランド・サガ(性)1

フィンランド・サガ(性)1

フィンランド・サガ(性)2

フィンランド・サガ(性)2

フィンランド・サガ(性)3

フィンランド・サガ(性)3

サウナを通じて思いもよらぬ深みを見せる展開は、
所々に才能の片鱗と少しの狂気を感じる。

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でも、本当に思ったよりも面白かったなぁ。

wikipediaで調べてみたら、「既婚者であり2児の父。趣味はそうじ。」らしい。

公式ブログやtwitterもあるぞ。

yoshidatakashi.blog54.fc2.com


twitter.com


しかも新刊出てる!!

やれたかも委員会 1巻

やれたかも委員会 1巻

と、思ったらやれたかも委員会の人じゃないか!!!
これも結構話題ですよね。。。

でも僕の出会いは、『フィンランド・サガ』が先でした。
やれたかも委員会で盛り上がっている諸君!
こっちも是非読んでくれたまへ。

フィンランド・サガ(性)1

フィンランド・サガ(性)1

フィンランド・サガ(性)2

フィンランド・サガ(性)2

フィンランド・サガ(性)3

フィンランド・サガ(性)3

人類滅亡の脅威は人類の進化からもたらされる。 高野和明/ジェノサイド

作品は2011年に出版されているが、今読むと
いけすかないアメリカの大統領がトランプを彷彿とさせて
妙なリアルさを感じる。

人類滅亡の脅威は人類の進化からもたらされるっていうお話なのだが、
進化した人類は文字通り人知を超えている、という設定が面白い。

人とは異なる方法で世界を認識し、理解している。
それは学習などで得られることではなくて、
我々には認識できないことが彼らはわかっているのだ、ということ。

例えば落ち葉を落とすといつも同じ場所に落ちるようにできる、とか。
葉の重さや、風の強さなど、1つとして同じ条件にはなり得ない環境でも、
瞬時に変動要因とその影響を認識して同じところに落とせるということ。
それが無意識にわかってしまう存在。

確かに人類の進化は今の人類の延長線的になだらかに起こるのではなくて、
突然変異として発生するのかもしれない。

現実や歴史の中で全くないとは言い切れない、絶妙なリアリティで
紡がれた物語なので、山田風太郎賞を受賞したってのも納得。

結構ボリュームあるけど、読み始めたら一気に読んでしまう快作でした。

ジェノサイド

ジェノサイド